ロードバイクで見かけるエモい瞬間 Vol.030~暮れなずむ街の~

雑記コラム

少し暑さを感じる6月のライド。冬の季節とは異なり、18時半過ぎでもまだ明るく走ることができる。大体いつもライドの帰りになる時間帯。その日が沈む前の瞬間が妙に心を打つのです。

本日、最後の、ペダリング

初夏の18時半過ぎ。昼間はあれだけ明るかった空が、少しずつ夜に飲み込まれていく時間帯。走り始めた頃には白かった景色が、淡いオレンジから群青色へゆっくり変わっていく。

昼の暑さはまだ身体に残っているのに、川沿いを走る風だけが少し涼しい。汗ばんだ腕に当たるその風が妙に気持ちよくて、ついペダルを回す脚が緩む。

もう帰るだけのライド。頑張る時間は終わっている。心拍も落ち着き、サイコンを見る回数も減る。ただ静かにチェーンが回り、タイヤがアスファルトをなぞる音だけが続いていく。

河川敷には、犬の散歩をする人。部活帰りの学生。ランニングをしている人。昼間のサイクリングロードとは違う、生活に戻っていく時間の空気が流れている。

ふと前を見ると、少し先にもローディーがひとり。同じように帰路についているのか、一定の速度で静かに走っている。追い抜くわけでもなく、無理に距離を詰めるわけでもなく、ただ同じ夕暮れの中を走っているだけなのに、不思議と安心感がある。

信号待ちで止まるたび、脚には今日走った距離の疲労がじわりと残っている。でも嫌な疲れではない。休日をちゃんと使い切ったような、どこか満たされた重さだ。

街に近づくにつれ、自動車のライトが増え始める。自分のフロントライトも路面を照らし始める。ほんの少し前まで夏の夕方だった景色が、気づけばもう夜の入口になっている。

なのに、なぜか帰りたくなくなる。

あと一本だけ遠回りしようか。もう少しだけ川沿いを走ろうか。そんな感情が自然と湧いてくる。

昼間の快晴とも、早朝ライドの澄んだ空気とも違う。初夏の18時半過ぎにしか存在しない、あの少し切なくて、少し心地いい時間。

ロードバイクに乗っていると、季節の終わりかけや、一日の終わりかけを、妙に敏感に感じるようになる。だからこそ、暗くなりかけた帰り道が、忘れられない景色になる。

フロントライトを点灯させると、白い光が、濃紺に染まりゆく路面をまっすぐに切り裂いた。昼間の非日常から、少しずつ住み慣れた日常の気配へとグラデーションのように戻っていくこの瞬間。寂しさと、それ以上の深い満ち足りた気持ちが、胸の奥からじわじわと広がってくる。

「今日も、いい一日だったな」

サドルの上で小さく呟き、私は家路を急ぐように、もう一度深くペダルを踏み込んだ。

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