ロードバイクで見かけるエモい瞬間 Vol.047 ~近くなった場所~

雑記コラム

ライドを始めたばかりの頃は50km走るだけで、こんなに走ったんだと感動したもの。そんな感動を思い出すのも良いのではないかなと思いまして。今日のエモい瞬間はそんなライドの経験をネタにしてみました。

いつの間にか、こんなに、遠くへ

ロードバイクを始めたばかりの頃、片道30kmはちょっとした冒険だった。地図を何度も確認し、ボトルの残量を気にして、帰りの脚が残っているか不安になりながらペダルを回す。それでも知らない景色が次々と現れるのが楽しくて、いつもより遠くへ行けた日は、それだけで少し誇らしかった。

そんな時期に初めてたどり着いた場所がある。川沿いの公園かもしれないし、峠の入口にある小さな休憩所かもしれない。海が見える堤防だった人もいるだろう。到着したときは「自転車だけでここまで来たのか」と、妙に感動したことを覚えている。スマホで愛車の写真を撮り、現在地を確認して、走ってきた距離をサイコンで何度も見返した。帰宅すれば脚は重く、翌朝まで疲れが残った。それでも達成感だけは大きかった。

あれから何年か経った休日、その場所を再び通る。今度は目的地ですらない。100kmほど走る予定のコースの途中で、給水するために立ち寄っただけだったりする。息も上がっていないし、この先の道にも不安はない。昔はあれほど遠く感じた場所なのに、今では「ここからが本番」くらいの距離になっている。

ふとロードバイクを止めて周囲を見る。景色はあの頃とそれほど変わっていない。川は同じ方向へ流れ、遠くに見える山も同じ場所にある。変わったのは自分のほうだった。

最初は怖かった車道にも慣れた。長い坂では無理に踏まなくなった。補給するタイミングも、疲れたときのペースの落とし方も覚えた。何度もパンクし、向かい風に苦しみ、途中で引き返した日もあった。速くなったかどうかだけでは測れない経験が、いつの間にか積み重なっている。

ロードバイクには、自分の成長を数字以外で教えてくれる瞬間がある。昔は特別だった場所が日常の行動範囲に変わっていることも、そのひとつだろう。

「こんな遠くまで来た」と思った場所で、今は「まだこんなところか」と思っている。

距離が縮んだわけではない。道が短くなったわけでもない。そこへたどり着くまでに感じていた心細さがなくなっただけだ。その場所が近く感じられた瞬間、これまで走ってきた何千、何万kmという時間が、少しだけ見える気がする。

そしてまたロードバイクに跨る。昔ならここで折り返していた。でも今日は、この先へ行く。あの頃より近くなった場所は、自分があの頃より遠くへ行けるようになった証でもある。

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