ライドをしていると、たまに妙にライドがキツかったりトラブルばかり発生する日があります。大抵の場合、腹立ててしまうものですが、この逆境を「ロードバイクならではの楽しみ」と捉えれば、案外楽しくなったりするのです。今日のエモい瞬間は、そんな逆境とそれを乗り越えた先にある充実感をエモい瞬間としてお届けしたいな、と。
困難も、乗り越えれば、よい思い出に
週末の河川敷で単独走。久しぶりにサドルに跨り、ペダルを漕ぎ出した瞬間は確かに高揚していた。空は雲一つない快晴。しかしサイコンの画面に目を落とした瞬間、現実を引き戻される。表示された気温はすでに30度を超え40度近い気温を表示していた。アスファルトから這い上がる陽炎が、容赦なく体力を削りにくる。
河川敷から目的地までの距離は約70キロメートル。そこそこのロングライドだが本当の地獄は距離でも気温でもなく風だった。天気アプリを確認すると遮るもののない広大な河川敷を、風速8メートルを超える向かい風が吹き荒れていた。見えない壁に体当たりを続けている感覚。パワーメーターの数値と速度のギャップが凄まじい。斜度に換算すれば常時4%から6%の坂を約70キロメートル、ずっと登らされる計算になる。平坦なはずの景色が、終わりのない激坂に見えてくる。
さらに追い打ちをかけるようにトラブルが牙を剥く。 途中の休憩でバイクを降りた際、歩き方が悪かったのか左足のクリートの先端が潰れてしまった。再び乗ろうとしてもペダルにまったく嵌まらない。騙し騙し踏み込んでいると、今度はDi2が沈黙。まさかの充電切れ。フロントがアウターに固定され、変速できないギア比で足を回し続けるしかなくなる。さらに最悪なこと、熱中症を警戒して頻繁に口に含んでいたボトルの水も、次の自販機を見つける前に底を突いた。
満身創痍。機材も乗り手も限界に近い。しかし不思議なことに、激しい苛立ちは湧いてこなかった。 灼熱の日差しが照り付けた強い向かい風の中、嵌まらない左足のクリートを意識しながら、変速しないギアをただひたすらに回す。カラカラに乾いた喉で前を見据えた時、脳裏を過ったのは歪んだ笑みだった。「あー、俺はいま、猛烈にライドをしている」という、妙な底抜けの楽しさが全身を突き抜けていく。すべてが計画通りに進む平穏なサイクリングでは決して味わえない、自然を相手にするスポーツの躍動がそこにはあった。
トラブルを一つずつねじ伏せ、文字通り風を切り裂いて、やっとの想いで目的地へと滑り込む。バイクを立てかけ、倒れ込むようにして自販機で買った冷たい水を喉に流し込んだ。
サイコンが刻むログは、悲惨な平均速度を示している。それでも胸を満たしたのは過去のどの快走よりも深い、圧倒的な充実感だった。逆境という名の最高のスパイスが、いつも走る100kmよりも、はるかに濃密な達成感を五感に刻みつけてくれた。


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