ロードバイクで見かけるエモい瞬間 Vol.039 ~青々とした稲穂~

雑記コラム

個人的に真夏を感じるのが青々と成長した稲穂です。日本は少し郊外に行くと、至る地域でお米を育てていますよね。昨日、ライドしていた時、ふとこの田んぼの光景は日本ならではなんだろうなと思い、今回のエモい瞬間として取り上げてみました。

太陽に、輝く、夏の稲穂

真夏の田んぼは、まだ黄金色にはなっていない。見渡す限り一面が、生命力に満ちた鮮やかな緑で埋め尽くされている。吹き抜ける風に合わせて青々とした稲穂が波のように揺れる景色は、この季節だけが持つ特別な美しさだ。

山へ向かう道でも、海沿いでもない。ただ田園地帯を抜けるだけの一本道。それなのに、この時期だけはなぜかペダルを踏む速度が少しだけゆっくりになる。目の前に広がる景色を、少しでも長く眺めていたくなるからだ。

照りつける太陽は容赦がない。ヘルメットの隙間から汗が流れ、ボトルの水はあっという間になくなっていく。それでも不思議と、この道だけは苦しさよりも心地よさが勝る。稲穂が風に揺れるたび、熱気まで一緒に運び去ってくれるような気がする。

耳を澄ませば、聞こえるのは風の音と虫の声。そしてタイヤが舗装路を転がる小さな音だけ。街では決して味わえない静けさの中を、自分だけが進んでいく。その時間は速く走るためでも、距離を稼ぐためでもない。ただ夏の真ん中を走っていることを、全身で感じるための時間になる。

田んぼの横を通るたび、毎年同じ景色のようでいて、実は同じ日は一日としてないことに気付く。植えられたばかりの頃より背丈は高くなり、少しずつ穂が膨らみ、やがて秋には黄金色へと姿を変える。その途中にある、この力強い緑色はほんの短い期間しか見ることができない。

ロードバイクに乗っていなければ、この変化に気付くことはなかったかもしれない。車なら一瞬で通り過ぎ、電車なら窓越しに眺めるだけだった景色を、自転車だからこそ風の匂いごと記憶に刻むことができる。

信号も少なく、時計を見ることもない。サイクルコンピューターの数字より、風に揺れる稲穂のほうが気になってしまう日があってもいい。速さを競うだけがロードバイクではないと、この景色が静かに教えてくれる。

夏は暑い。だからこそ走るのをためらう日もある。それでも青空の下、一面に広がる青々とした稲穂の中を走り抜けた記憶は、秋になっても冬になっても心に残り続ける。そして翌年また同じ季節になると、あの緑色にもう一度会いたくなって、自然とペダルを踏み始めている。

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