ロードバイクには乗りたい。でも家を出るまでが、とにかく面倒です。ウェアに着替えて、タイヤの空気圧を確認して、ボトルと補給食を用意して、忘れ物がないかチェック。ようやく準備が整ったと思ったら、なぜかトイレにも行きたくなります。それでも走り出した瞬間、「やっぱり来てよかった」と思ってしまうのがローディーです。今回はそんな出発前の面倒くささを振り返ります。
走りたい。でも準備は面倒
休日の朝、天気は晴れ。時間もあるし、今日はロードバイクに乗ろうと思っていた。それなのに、いざ出発しようとすると急に腰が重くなることがあります。走ることが嫌なのではありません。むしろロードバイクには乗りたいのです。ただし、その前に待っている準備を考えると面倒になってきます。
普段着のまま玄関を出られる散歩とは違い、ロードバイクは「乗ろう」と思ってから実際に走り始めるまでにいくつもの工程があります。サイクルウェアを出して、着替えて、ヘルメットやグローブを用意する。スマホや財布を持ったか確認し、必要ならサングラスやウインドブレーカーも準備します。ロングライドなら携行品も増えるため、出発前からやることが山積みです。
さらにロードバイク本体もそのまま持ち出せば終わりとはいきません。タイヤの状態は大丈夫か、空気は入っているか、ライトやサイコンの充電は残っているかなど、気になる部分が次々と出てきます。前日のうちに済ませておけば楽なのですが、毎回そこまで計画的に動けるとは限りません。朝になってから全部始めると、「自転車に乗るだけなのに、なんでこんなにやることがあるんだ」と思えてきます。
ここで厄介なのが、自宅という快適な環境です。ソファはあるし、エアコンも効いている。コーヒーを飲みながらスマホを眺めていたら、気づけば予定していた出発時刻を過ぎていることもあります。「8時には出よう」が「9時でもいいか」になり、さらに「昼からでも走れる」に変わっていく。この時間帯が、ローディーにとって最初の難関なのかもしれません。
それでも不思議なのは、一度ロードバイクにまたがって走り始めれば、さっきまでの面倒くささをあっさり忘れてしまうことです。家にいる間はあれほど億劫だったのに、数kmも走れば「出てきて正解だった」と感じます。走りたい気持ちは最初からある。ただ、そこへたどり着くまでが長い。ロードバイクという趣味は、玄関を出る前からすでに始まっているのです。
ウェアに着替えるだけでひと仕事
ロードバイクに乗る日の着替えは、Tシャツとパンツを適当に選んで終わりとはいきません。まずサイクルジャージを選び、ビブショーツを履き、ソックスを合わせます。季節によってはインナー、アームカバー、レッグカバー、ジレなども加わります。外へ出たときの気温を想像しながら組み合わせを考えているだけで、そこそこ時間がかかります。
特に悩ましいのが季節の変わり目です。朝は肌寒いのに昼間は暑くなる予報だと、長袖にするか半袖にするかで迷います。防寒を優先すると走っている途中で暑くなり、薄着を選ぶと出発直後に寒さを後悔するかもしれません。天気予報の気温を何度も見ながら、クローゼットの前で考え込むことになります。近所へ買い物に行くだけなら絶対にここまで悩まないはずです。
着るものが決まっても、まだ終わりません。身体に密着するビブショーツを履き、ジャージの袖を通し、バックポケットへ持ち物を振り分けます。スマホはどこに入れるか、財布は必要か、鍵を落とさない場所はどこかと考えているうちに、単なる着替えが出発準備の一部へ変わっています。シューズまで履いたところで忘れ物に気づき、もう一度部屋へ戻ることもあります。
そして鏡に映った自分を見ると、さっきまで部屋着だった人間が完全なローディーへ変身しています。ヘルメット、サングラス、グローブまで装着すれば、見た目だけなら今すぐ100kmでも走れそうです。しかし本人はまだ自宅にいます。ここまで装備を整えただけなのに、妙な達成感すらあります。
ロードバイクに乗ってしまえばサイクルウェアの機能性はありがたいものですが、そこへ至るまでの手間は決して少なくありません。「今日はちょっと走ろうかな」という軽い思いつきに対して、着替えだけは妙に本格的です。ロードバイクを趣味にしていると、自転車にまたがる前からすでにひと仕事終えたような気分になるのです。
空気圧チェックから始まる出発前儀式
サイクルウェアへの着替えを終えたら、いよいよロードバイクを外へ出せるかと思いきや、まだ確認しておきたいことがあります。その代表がタイヤの空気圧です。前回乗ったときには問題がなくても、時間が経てば空気は少しずつ抜けていきます。タイヤを指で押して感触を確かめ、「ちょっと減っている気がする」と思えばフロアポンプの出番です。
バルブキャップを外し、ポンプヘッドを取り付け、ゲージを見ながら空気を入れていきます。前輪が終わったら後輪も同じ作業です。適正な空気圧はタイヤ幅や体重、路面などによって変わるため、毎回まったく同じ数値にすればいいとは限りません。「今日は路面がきれいだから少し高め」「長距離だから乗り心地を優先しよう」などと考え始めると、ただ空気を入れるだけだったはずの作業にも妙なこだわりが出てきます。
タイヤを触ったついでに表面を眺めると、小さな傷や異物まで気になり始めます。するとブレーキ周辺やチェーンにも目が移り、「そういえば前回ちょっと音がしていたな」と別の確認まで始まります。ロードバイクを眺めているうちに、いつの間にか簡単な点検タイムへ突入してしまうのです。出発するために自転車を見ていたはずなのに、気づけばしゃがみ込んで車体の細部を確認しています。
もちろん走行前に状態を確かめることは、安全に楽しむためにも重要です。だから省略したくない一方で、早く走りたい日には少々もどかしく感じます。すでにウェア姿になっているのに、玄関先でポンプをシュコシュコ動かしている時間は、まさにローディー特有の出発前儀式です。
ようやく前後のタイヤを整えて「これで行ける」と思ったところで、今度はライトやサイコンが目に入ります。こうしてひとつ確認すると、次の確認事項が自然に現れます。ただ自転車に乗りたいだけなのに、なかなかペダルを踏み出すところまでたどり着けません。それでも一通り済ませないと落ち着かないあたり、面倒だと思いながら毎回繰り返してしまうローディーの性なのかもしれません。
ボトル、補給食、忘れ物チェックが終わらない
車体の確認が済んでも、すぐに出発できるわけではありません。次に待っているのが持ち物の準備です。まずボトルに水やスポーツドリンクを入れ、走る距離に合わせて補給食を用意します。近場を軽く走るだけなら少なくて済みますが、50km、100kmと距離が伸びれば必要なものも増えていきます。「途中で買えばいい」と思いつつ、念のためジェルや羊羹をバックポケットへ入れているうちに荷物が膨らんでいきます。
スマホ、財布、家の鍵、携帯工具、予備チューブやパンク修理用品なども忘れたくありません。ライトを使うなら充電状態も気になりますし、サイコンを装着したところでバッテリー残量が少ないことに気づく場合もあります。モバイルバッテリーまで持っていくべきか考え始めると、もはや数時間のサイクリングとは思えないほど慎重になってきます。
厄介なのは、全部そろえたはずなのに「何か忘れている気がする」という感覚が消えないことです。スマホはある。鍵もある。補給食も入れた。ボトルもセットした。それなのに玄関まで来ると、もう一度バックポケットへ手を入れて確認したくなります。特に家から遠くまで走る日は、一度出てしまえば簡単には取りに戻れないため、念入りになりがちです。
ようやく準備完了と思った瞬間に、「あ、日焼け止め塗ってない」「現金を入れてない」「ボトルを冷蔵庫に置いたままだ」と新たな問題が発生することもあります。ひとつ取りに戻れば、ついでに別のものが気になり、また確認が始まります。出発時刻は少しずつ後ろへずれていきますが、本人はまだ1mも走っていません。
ロードバイクではトラブルに備えることも大切なので、ある程度の装備を持つ必要があります。しかし備えようとすればするほど、持っていくものは増えていきます。全部そろえた安心感と、何かを忘れているような不安を行ったり来たりしながら、最後は「もう大丈夫だろう」と自分に言い聞かせて玄関へ向かう。ローディーにとって忘れ物チェックは、終わったと判断しない限り永遠に終わらない作業なのです。
玄関を出る直前になぜかトイレへ行きたくなる
すべての支度を終えて、ヘルメットをかぶり、サングラスを装着し、シューズも履いた。ロードバイクを玄関まで運び、「よし、行くか」とドアに手をかけたその瞬間、なぜかトイレへ行きたくなることがあります。数分前までは何ともなかったのに、出発できる状態になった途端に気になり始めるのだから不思議です。
ここで「まあ大丈夫だろう」と出かける勇気は、なかなか持てません。これから数時間は自転車の上です。走り始めてすぐコンビニを探す展開になるくらいなら、今のうちに済ませておいたほうが安心です。結局シューズのまま家の中を歩くわけにもいかず、一度脱いでトイレへ向かいます。せっかく完成した出撃態勢が、最後の最後で解除されます。
ロングライドの日になると、この現象はさらに起こりやすくなります。朝食を食べ、水分を取り、コーヒーまで飲んでいれば、身体が反応するのも無理はありません。しかも「しばらくトイレへ行けないかもしれない」と考えた瞬間、余計に気になってきます。実際には道中にコンビニや休憩施設があると分かっていても、自宅を離れる前に済ませておきたい気持ちは消えません。
ようやく戻ってきたら、再びシューズを履き、ヘルメットの位置を整えて出発態勢を作り直します。ところが今度は「鍵を持ったっけ」と気になり、ポケットを触って確認します。ここまで来ると、玄関はスタート地点というより最終検査場です。ドアを開けるだけなのに、なかなか外の世界へたどり着けません。
それでもトイレを済ませたあとの安心感は絶大です。これでもう心配することはないとロードバイクを外へ出し、ようやく本当のスタートを迎えます。予定より出発が遅れていたとしても、ここまで来ればこっちのものです。ローディーの朝はペダルを踏み始めるまでが長く、その最後に待ち構えている関門が、なぜか絶妙なタイミングで訪れるトイレなのです。
結論|走り出せば全部どうでもよくなる
あれだけ面倒だった出発前のあれこれも、ロードバイクにまたがって走り始めれば驚くほど簡単に忘れてしまいます。家の中では着替えることすら億劫だったのに、外へ出てペダルを回し始めると気分は一変します。身体に風を受け、タイヤが軽やかに転がり、いつもの道を抜けていくうちに「今日はやめておけばよかった」ではなく、「ちゃんと出てきてよかった」と思えてくるから不思議です。
特に天気の良い休日は、その変化が分かりやすく感じられます。青空の下をロードバイクで進み、街を離れて走りやすい道へ入れば、家でグズグズしていた時間などすっかり過去の話です。気になる道へ寄ってみたり、予定より少し遠くまで足を延ばしたりしているうちに、出かける前の面倒くささが嘘のように消えていきます。
そしてライドを終えて帰宅すると、「やっぱりロードバイクは楽しい」と満足します。次の休日も乗ろうと思い、場合によっては次回のコースまで考え始めます。ところが数日後、その休日がやって来ると、またウェアを前にして腰が重くなる。この繰り返しまで含めて、ローディーの日常なのかもしれません。
乗ってしまえば楽しいことは本人が一番よく知っています。それでも毎回すんなり外へ出られるとは限りません。だから家を出るまでの最大の攻略法は、完璧にやる気が出るのを待つことではなく、とりあえず着替えてロードバイクを玄関まで持っていくことです。そこさえ突破してペダルを踏み出せば、さっきまで何を面倒がっていたのかさえどうでもよくなります。
ローディーにとってその日の最大の難所は、峠でも向かい風でもなく、自宅の玄関なのです。


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