「ロードバイクって健康的な趣味ですよね」と言われることがあります。しかし、AIにローディーの行動をそのまま分析させたら、きっと首をかしげるでしょう。休日ほど朝早く起き、坂道を見つけると喜び、軽くなるために何十万円も使い、消費した以上のカロリーを補給し、身体のラインが丸わかりの格好で街を走る。趣味を知らない人から見れば、どう考えても不思議な生態です。
今回は、そんなローディーをAI目線で分析したら「ただの変人」と判定されそうな特徴を、笑いながら振り返っていきます。
たかが自転車にン十万円単位で投下
ロードバイクを趣味にしない人へ「自転車にいくら使ったの?」と聞かれると、多くのローディーは一瞬だけ思考が止まります。本体だけでも数十万円、ホイールを替え、ヘルメットを新調し、ウェアやシューズ、小物まで数え始めると、途中で計算をやめたくなるからです。AIに家計簿を分析させたら「この人は移動手段へ異常な投資をしています」と警告を出すかもしれません。
ところが本人はいたって真面目です。「このホイールは巡航性能が違う」「軽くなればヒルクライムが楽になる」「これは安全への投資です」と、どれも納得できる理由を並べ始めます。そして数か月後には「今度のモデルは前より30g軽いらしい」と新たな物欲が目を覚まします。一般の人から見れば30gなど誤差ですが、ローディーにとっては真剣に悩む数字です。
冷静に考えれば、数十万円かけて数百グラム軽くした自転車へ乗り、その帰りにラーメンとチャーハンと唐揚げを注文して体重を1kg近く増やして帰宅することもあります。それでも本人は満足そうです。AIは最後まで理解できず「合理性は確認できませんでした」と結論づけるでしょう。しかしローディーだけは知っています。これはお金ではなく、楽しさへ投資しているのだということを。
休日ほど早起きする謎の生物
平日の朝は目覚ましを三回止め、布団から出るだけで人生最大級の決断を迫られるのに、ライドの日だけは午前4時台でも勝手に目が覚めます。会社へ行く日は「あと5分」が永久に続くのに、自転車へ乗る日はアラームが鳴る前から天気予報と風向きを確認し、チェーンへ油まで差しています。家族から見れば、同じ人間とは思えません。
空が白み始める頃にはジャージへ着替え、朝食を詰め込み、静かな住宅街でカチカチとクリート音を響かせながら出発します。世間では休日は身体を休める日ですが、ローディーは自ら100km先へ向かい、坂を越え、向かい風に揉まれて帰ってきます。しかも帰宅後は「今日は軽めだった」と発言します。一般人にとって100kmは旅行ですが、本人にとっては午前中の用事です。
さらに不思議なのは、前夜に飲み会があってもライドなら起きられることです。仕事の早朝会議には顔をしかめるのに、集合場所がコンビニになるだけで午前5時集合を受け入れます。AIが生活リズムを解析したら、睡眠不足ではなく「自転車接近時のみ発動する特殊覚醒能力」と判定するでしょう。休日ほど早起きし、疲れるために遠くまで走る。冷静に見るとかなり奇妙ですが、朝焼けの中を走る気持ちよさを知ってしまえば、もう普通の休日には戻れないのです。
坂を見ると喜ぶ異常行動
一般人が坂道を見つけたときに考えるのは「遠回りできないか」です。しかしローディーは違います。道路の先が明らかに空へ向かって伸びているのを見つけると、なぜか目を輝かせて「これは楽しそうですね」と言い始めます。勾配標識に10%と書かれていれば普通は警告ですが、彼らにとっては挑戦状です。地図アプリでも最短距離より獲得標高を確認し、わざわざ山を越える経路を選びます。平坦なら快適に進めるのに、自分から呼吸困難と脚の痛みを買いに行くのです。
登り始めて数分もすると、先ほどまでの笑顔は消えています。顔はゆがみ、息は荒くなり、サイコンを見ては「まだ半分か」と絶望します。それでも足を着くことは敗北だと考え、時速一桁で必死にペダルを回します。頂上へ着いた瞬間には二度と来ないと誓うのですが、帰宅して記録を確認すると「前回より30秒速い」と喜び、次の週にはさらに険しい峠を検索しています。苦しみの記憶だけ都合よく削除される特殊な機能が搭載されているのでしょう。
下り坂を楽しみたいから登るという説明もありますが、登りそのものを好む人になると話は別です。坂を見て興奮し、苦しみながら登り、到着後は絶景より勾配とタイムについて語ります。AIが行動を解析すれば「苦痛を与える地形へ自発的に接近する不可解な傾向」と記録するはずです。それでも頂上まで自分の脚でたどり着いた達成感は格別です。坂を避ける人生より、坂を見つけて笑う人生のほうが、ローディーには似合っているのかもしれません。
軽量化と言いつつ過剰カロリーを摂取
ローディーは自転車の軽量化には驚くほど厳格です。ボトルケージが数g軽い、サドルを替えれば100g削れる、チューブを変更すれば回転部分がわずかに軽くなると聞けば、財布のひもを迷いなく解除します。ところが休憩地点へ着いた瞬間、その繊細な重量管理はどこかへ消えます。カツカレーに大盛りを付け、デザートへソフトクリームを追加し、帰り道のコンビニではエネルギー切れ対策として菓子パンまで確保します。自転車から100gを削るために高価な部品を購入した直後、本人の胃袋へ1kg近い補給物資を積載するのです。
本人にも言い分があります。「今日はかなり消費しています」「補給しないとハンガーノックになります」「帰宅までがライドです」と、口元にクリームを付けながら理路整然と説明します。確かに長距離走行にはエネルギー補給が欠かせません。しかし消費カロリーが免罪符になると、食事は次第に補給という名の宴会へ変わります。サイクルラックのある店を目的地に設定し、そこまで走った距離を根拠に好きなものを注文するため、ライドが運動なのか食事会なのか分からなくなります。
さらに帰宅後には「頑張ったご褒美」としてビールを開け、おつまみを並べます。サイコンが表示した消費量はすでに昼食で使い切っている可能性がありますが、その事実には触れません。AIへ走行記録と食事内容を同時に入力すれば「車体は軽くなりましたが、搭乗者は増量傾向です」と無慈悲な結果を返すでしょう。それでもおいしいものを罪悪感なく食べられることは、自転車趣味の大きな魅力です。軽量化とは速く走るための行為ではなく、心置きなく大盛りを頼むための準備なのかもしれません。
身体のラインをモロに出す露出狂
街中で全身ぴったりの服を着て歩いていたら、かなり視線を集めるでしょう。ところがローディーは、その格好で堂々とコンビニへ入り、道の駅でソフトクリームを食べ、サイクルラックの前で談笑しています。ロードバイクを知らない人から見れば「この人たちはなぜこんなに身体のラインを隠さないのだろう」と不思議に思われても仕方ありません。AIへ画像だけ見せたら「競技中ですか?」と質問してきそうです。
もちろん本人たちには立派な理由があります。空気抵抗を減らし、汗を効率よく処理し、長時間でも快適に走るためです。実際には非常に機能的なウェアなのですが、その説明を知らない人にはなかなか伝わりません。信号待ちで並んだ小学生にじっと見つめられたり、初対面の人から「寒くないんですか」と聞かれたりするのは、多くのローディーが一度は経験する恒例行事です。
さらに面白いのは、最初は「こんなの絶対に着られない」と言っていた初心者ほど、数か月後には鏡の前で新しいジャージのデザインを真剣に選び始めることです。気づけば限定カラーを集め、上下の組み合わせにまでこだわり、仲間から「そのジャージいいですね」と褒められると満面の笑みになります。AIが時系列で分析したら「羞恥心の設定がロードバイク購入後に大幅アップデートされました」と診断するでしょう。趣味の世界では当たり前でも、一歩外から眺めればかなり独特です。それでも風を切って走り出した瞬間、その格好がいちばん快適だと誰もが納得してしまうのです。
結論|変人だからロードバイクは楽しい
ここまでの行動を並べると、ローディーは相当おかしな存在です。高価な乗り物へ惜しみなく資金を注ぎ、休みの日には夜明け前から起床し、楽な道を避けて山へ向かい、部品の数gには神経を尖らせる一方で大盛りを平らげ、身体の輪郭が丸見えになる服装で街中を歩きます。AIへ一連の記録を渡せば「効率を求めているようで非効率を全力で楽しむ人々」と分類されても反論できません。
それでもロードバイクへ乗る理由は、こうした無駄に見える時間が驚くほど充実しているからです。目的地へ早く着くだけなら自動車や電車があります。わざわざ自分の脚で進み、風に苦しみ、坂で後悔し、帰宅後に走行データを眺めながらニヤつく必要はありません。必要がないからこそ夢中になれます。役に立つかどうかではなく、本人がどれだけ楽しいかだけで休日の予定を決められるのです。
同じ趣味を持つ者同士なら、タイヤの空気圧やチェーンの音だけで延々と会話できます。一般社会では披露する機会のない知識も、サイクルカフェでは立派な共通言語です。知らない相手とも車種やルートの話から打ち解け、気づけば翌週の峠へ一緒に向かっています。AIには説明しにくい人間関係ですが、当事者には自然な流れです。
変人とは、誰にも迷惑をかけず好きなことへ本気になれる人の別名なのかもしれません。常識的な楽しみ方だけを選んでいたら、朝焼けの道路も、頂上で飲む水のおいしさも、仲間と走り切った達成感も知ることはありません。ロードバイクが楽しいのは合理的だからではなく、全力で無駄を楽しめるからです。今日もどこかでローディーは、自分だけは普通だと思いながら、嬉しそうに次の坂を探しています。



コメント