気合を入れて準備を済ませ、今日はしっかり走るぞと家を出ます。ところが走り始めてわずか5分、ヘルメットや腕にポツッと冷たい感触。「……雨?」。空を見ると、まだ引き返すほどではなさそうです。でも、このまま進んで本降りになったら最悪。かといって5分で帰宅するのも悔しい。そんなローディーを猛烈に迷わせる、ライド開始直後の雨について考えてみます。
出発5分、まさかの雨
念入りに空模様を確認し、雨雲レーダーも問題なし。タイヤの空気圧を整えてボトルも用意し、ようやく走り出したと思った矢先、腕にポツッと冷たいものが当たります。「気のせいか?」と思いながらペダルを回していると、今度はサイコンの画面に小さな水滴。家を出てまだ5分です。身体は温まっていないし、予定していたコースにも入っていません。それなのに空からは、確実に雨らしきものが落ちてきています。
こうなると困るのが、土砂降りなら迷わず帰れるのに、数滴程度だと判断できないことです。ここまで準備したのだから走りたい。せっかくジャージに着替えたのに5分で終了するのも悔しい。しかも頭上を見れば、今にも崩れそうな空というほどでもありません。「これくらいならすぐ止むだろう」という期待が、帰宅という選択肢を遠ざけます。
しかしロードバイクにとって雨は、単に身体が濡れるだけの問題ではありません。路面が濡れ始めれば滑りやすくなり、愛車には泥水が跳ね、帰宅後には予定していなかった洗車まで待っています。まだ5分しか走っていないからこそ戻るなら今です。それでもペダルを止めたくない。この数滴の雨が、今日のライドで最初に現れる最大の難問だったりするのです。
引き返す?そのまま走る?
雨粒を感じた瞬間から、頭の中では「戻る」と「続行」の二択が激しくぶつかり始めます。自宅はまだすぐそこなので、引き返しても失う時間はわずかです。普通に考えれば帰るなら今がベストでしょう。しかしローディーにとって厄介なのは、走るために費やした準備の時間と、出発するまでに高めた気持ちです。ジャージに着替え、補給を用意し、空気を入れ、ルートまで決めたのに、この程度で終わらせていいのかという妙な意地が出てきます。
そこで「もう少しだけ進んで様子を見よう」という第三の選択肢が登場します。これが実に危険です。10分だけのつもりが20分になり、気づけば自宅からそれなりに離れています。その頃になって雨脚が強まれば、戻るにも同じ距離を走らなければなりません。反対にそのまま止んで青空が広がれば、続行した自分の判断を褒めたくなります。正解が分かるのは少し先だからこそ悩ましいのです。
結局この場面では、今日走りたいという気持ちと、濡れずに済むうちに帰ったほうがいいという理性の勝負になります。ペダルを回しながら何度も空を見上げ、「あと少しだけ」と自分に言い聞かせ始めたら、すでに続行する理由を探しているだけなのかもしれません。
ローディーを惑わせる「まだ小雨」
厄介なのは、ジャージがびしょ濡れになるほど降っていないことです。顔にたまに雨粒が当たり、路面を見てもまだ乾いている部分が多い程度。「これなら走れる」と思えてしまう絶妙な降り方が、ローディーの判断を鈍らせます。いっそザーザー降りなら諦めもつきますが、小雨では中止にする理由として弱く感じてしまいます。
しかも数分間まったく降らない時間があると、「ほら、止んだ」と都合よく解釈してしまいます。ところが安心した直後に、またポツポツ。そこで帰ればいいものを、「この先は明るいから大丈夫そう」「雲が流れれば晴れるはず」と、自分に有利な材料ばかり集め始めます。走りたい気持ちが強いほど、わずかな晴れ間さえ続行を正当化する根拠に見えてくるものです。
問題は、小雨と本降りの境界線が見えないことです。あと10分で止むかもしれませんし、一気に強くなる可能性もあります。進むほど帰るまでの道のりは長くなり、いつの間にか「今さら戻っても同じ」という領域へ入っていきます。ローディーを最も惑わせるのは大雨ではありません。「まだ走れる」と思わせてくる中途半端な小雨なのです。
雨雲レーダーとのにらめっこ
ポツポツと雨を感じたら、ローディーが頼りたくなるのがスマホの雨雲レーダーです。安全な場所に停車して画面を開き、現在地周辺の雲の動きを確認します。ここで雨雲がすぐに抜けそうなら希望が見えてきますが、進行方向にまとまった雨雲が広がっていれば話は変わります。予定していたルートと雨のエリアを見比べながら、「こっちへ逃げれば降られないか」「少し待てば通過するか」と、いつの間にかライドより天気の分析に夢中になります。
さらに悩ましいのが、予報と目の前の空模様が微妙に一致しないときです。画面上では降雨エリアから外れているのに実際にはポツポツ落ちてくることもあれば、雨雲が近づいている表示なのに頭上は明るい場合もあります。すると「レーダーを見る限り大丈夫そう」という走りたい側の主張と、「いや、実際に降っているだろ」という現実的な判断が頭の中でぶつかります。
雨雲レーダーは行動を決めるための便利な材料ですが、絶対に濡れないことを保証してくれるものではありません。表示だけを信じ切るのではなく、周囲の雲や雨脚、路面の状態も合わせて確認することが大切です。それでも画面を更新するたびに雨雲が消えていないか期待してしまうのは、どうにか今日のライドを続けたいローディーの性なのかもしれません。
濡れる前ならまだ間に合う
判断を先延ばしにしているうちに、アスファルトに黒い点が増え始めたら要注意です。まだウェアも愛車もほとんど濡れていないなら、そこで切り上げれば被害は最小限で済みます。帰宅後にタオルで軽く水滴を拭き取る程度なら、それほど手間もかかりません。ところが「せっかく外に出たのだから」と粘っていると、あっという間に状況が変わることがあります。
特に避けたいのは、路面が完全にウェットになるまで進んでしまうことです。タイヤが巻き上げた水や汚れがフレームやドライブトレインに付着し、ブレーキやコーナリングにも普段以上の注意が必要になります。身体まで冷えてくれば快適なサイクリングどころではありません。楽しいはずの休日が、ただ濡れて帰るだけの時間になってしまいます。
「もう少し走りたい」と思える段階で切り上げるのは、少しもったいなく感じるものです。しかし自宅から近く、まだ大して濡れていない状況は、撤収するにはむしろ絶好のタイミングです。今日の数十キロを諦めれば、愛車を泥だらけにせず、自分も冷たい雨に打たれずに済みます。走り足りない気持ちは残りますが、「あのとき戻って正解だった」と思える可能性は十分にあります。
撤退も立派なライド判断
せっかくの休日に早起きして準備までしたのに、わずかな時間で帰宅するのは負けたような気分になるかもしれません。予定していた距離を一本も走れず、サイコンに残るのは近所を一周した程度の記録だけです。それでも天候が怪しいと感じた時点で切り上げることは、決して格好悪い選択ではありません。むしろ状況を見極めて無理をしないことも、長くロードバイクを楽しむために必要な判断力です。
雨天では視界が悪くなるだけでなく、濡れた路面によってタイヤのグリップにも普段以上の注意が必要です。白線やマンホール、落ち葉など、晴れているときなら気にならない場所にも慎重さが求められます。せっかくのサイクリングなのに、景色や走りを楽しむ余裕がなくなってしまっては本末転倒です。
走行距離が5kmでも100kmでも、無事に家へ戻ってくるところまでがライドです。今日はやめておこうと決めれば、次の晴れた日にまた思い切り走れます。玄関に戻ってサイコンを止めた瞬間は少し虚しくても、数時間後に窓の外が土砂降りになっていたら話は別です。「帰ってきて正解だった」。そんな小さな勝利で終わる休日があってもいいのです。
まとめ|安全第一
ライドを始めてすぐに雨が降ってきたら、走り続けたい気持ちが勝ってしまうのもローディーならではです。せっかく確保した休日ですし、準備にかけた時間を考えれば、簡単には諦めたくありません。しかし天候だけは、自分の都合に合わせてくれません。わずかな雨だったはずが急に強くなることもあり、濡れた道路では晴天時とは異なるリスクも生まれます。
だからこそ大切なのは、その日の予定を完遂することより、安全に帰ってくることです。無理をして走った数十キロより、「今日はやめておく」と決められた経験のほうが、長い自転車生活では価値を持つこともあります。ロードバイクは今日しか乗れないものではありません。天気に恵まれた日に改めて楽しめばいいのです。たった5分で終わる日があっても、それは失敗ではありません。安全第一で帰宅することも、ローディーに必要な立派な選択なのです。


コメント