あれ?この道、走ったことあるかな?でもこんな道だったかな?ライド中、たまにこんな感覚に陥ることがあります。大概の場合、それはいつか、誰かと走った道なことが多いもの。今日のエモい瞬間はそんな蘇ってくる記憶を題材にしてみました。
かつて、誰かと走った、この道
ペダルを回しながら、ふと気づくことがある。この道、こんな景色だったかと違和感を覚える瞬間だ。川沿いの緩やかなカーブも、街路樹の並びも、何ひとつ変わっていないはずなのに、記憶の中の風景とはどこか違う。理由は単純で、あのとき隣にいた人がいないからだ。
初めて一緒に走った日、ぎこちない会話のままスタートして、気づけば同じリズムでペダルを回していた。無理に話さなくても成立する空気が、やけに心地よかったのを覚えている。坂の手前で少しだけ振り返ってくれたことや、信号待ちで交わした何気ない一言が、この道の一部として染み込んでいる。
ひとりで同じルートをなぞると、その断片が不意に浮かび上がる。あのときはここで笑った、ここで少し息が上がっていた、そんな些細な記憶が、風景の上に重なるように蘇る。むしろ今見えている現実の景色よりも、記憶の中のほうが鮮明に感じられる瞬間すらある。
ロードバイクで走る道は、ただの距離やコースでは終わらない。誰と走ったか、その時間がどんな温度だったかで、まるごと意味を変えてしまう。同じ道でも、ひとりで走るときと、誰かと並んで走るときとでは、まるで別の場所のように感じられるのはそのせいだ。
やがて、その人と走ることがなくなったとしても、道だけはそこに残り続ける。変わらないはずの風景が、思い出を呼び起こす装置のように働き続ける。新しい記憶を重ねても、完全に上書きされることはない。
だからまた同じ道を選んでしまう。景色を見るためではなく、もう一度あの時間に触れるために。ペダルを踏み込むたびに、確かに存在していた並走の記憶が、静かに隣へ戻ってくるのだ。


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