歓喜、絶望、逆転劇、そして歴史的偉業。今年のツール・ド・フランスも世界最高峰のレースにふさわしい21日間となりました。タデイ・ポガチャルは前人未到の領域へまた一歩近づき、新世代のイサク・デルトロが鮮烈なインパクトを残すなど、毎日のように語り継がれる名場面が誕生しています。本記事では全21ステージの流れをはじめ、各賞ジャージの行方、大会を彩った印象的な出来事、そして2027年へつながる見どころまで、ツール・ド・フランス2026を余すことなく振り返ります。
開催概要
ツール・ド・フランス2026は、2026年7月4日から7月26日までの23日間にわたり開催された世界最高峰のステージレースです。今大会は第113回大会として実施され、スペイン・バルセロナをスタートし、フランス・パリまで全21ステージで争われました。大会総距離は約3,320kmで、チームタイムトライアルと個人タイムトライアルをそれぞれ1ステージずつ実施。さらに平坦、丘陵、高山ステージがバランス良く配置され、スプリンターから総合優勝候補、パンチャー、クライマーまで、あらゆるタイプの選手に見せ場が用意されたコースレイアウトとなりました。
特に大会初日にチームタイムトライアルが採用されたことや、アルプ・デュエズでの山頂フィニッシュなどが大きな話題となり、開幕前から近年屈指の難コースとして注目を集めました。また、最終ステージはフランス南西部で発生した大規模な山火事への対応に伴い、安全面を考慮して予定より短縮される異例の措置が取られています。世界中のファンが見守る中、3週間にわたる熱戦が繰り広げられました。
ツール・ド・フランス2026の主だった出来事
1.タデイ・ポガチャルが歴代最多タイの総合5勝目
タデイ・ポガチャルは区間5勝を挙げる圧倒的な走りを見せ、3年連続となるツール・ド・フランス総合優勝を達成しました。通算5度目の制覇は、ジャック・アンクティル、エディ・メルクス、ベルナール・イノー、ミゲル・インデュラインが持つ歴代最多記録に並ぶ快挙です。山岳ではライバルを突き放し、個人タイムトライアルでも安定した強さを発揮。ヨナス・ヴィンゲゴーの途中棄権後も守りに入らず、攻撃的な姿勢を崩しませんでした。最終的には総合2位のレムコ・エヴェネプールに6分26秒差をつけ、現在の男子ロードレース界を代表する王者としての地位を改めて示しています。27歳で達成した5勝目により、今後は単独最多となる6度目の優勝へ挑むことになります。
2.ヨナス・ヴィンゲゴーが落車で途中棄権
タデイ・ポガチャルの最大のライバルと目されていたヨナス・ヴィンゲゴーは、第15ステージで落車に巻き込まれ、レースを続けることができず途中棄権となりました。大会序盤から総合上位につけ、過去に2度ツール・ド・フランスを制した実力者として逆転の機会をうかがっていましたが、思わぬ事故によってその挑戦は終わりを迎えています。ヴィンゲゴーの離脱により、ポガチャルとの直接対決を期待していたファンにとっては残念な結末となり、総合争いの構図も大きく変化しました。最後まで走り切れば山岳で反撃する可能性も残されていただけに、勝負の行方を左右した今大会屈指の出来事といえます。
3.深夜のドーピング検査が物議
大会期間中にはタデイ・ポガチャルやヨナス・ヴィンゲゴーらが就寝中に起こされ、夜間のドーピング検査を受けたことが明らかになりました。検査は国際検査機関が実施し、パリの裁判官による許可を得たうえで行われたとされています。競技の公正さを守るための抜き打ち検査は欠かせない一方、3週間にわたって過酷なステージを走る選手にとって、睡眠は身体を回復させる重要な時間です。そのためチームや選手からは、休養を妨げる時間帯に実施する必要があったのかという疑問も示されました。クリーンな競技を証明する厳格な管理と、アスリートの健康をどこまで両立させるべきか。今回の一件は検査の是非ではなく、実施方法を巡る課題を浮き彫りにしています。
4.UAE Team Emirates-XRGの圧倒的なチーム力
UAE Team Emirates-XRGはタデイ・ポガチャルの総合制覇を支えながら、イサク・デルトロを総合3位と新人賞へ導き、チーム総合でも首位に立ちました。ポガチャルの5勝とデルトロの1勝を合わせて区間6勝を記録するなど、個人の能力だけでは説明できない層の厚さを見せています。山岳ではアシスト陣が集団の先頭を固め、ライバルの攻撃を封じながらエースを勝負どころまで温存しました。状況に応じてデルトロの表彰台も守る柔軟な戦術を採り、複数の目標を同時に達成した点も特筆されます。ポガチャルを勝たせるためだけの集団ではなく、次代を担う若手まで結果を残せる布陣を築き上げたことで、他チームとの差を強く印象づけました。
5.Uno-X Mobilityが過去最高のツールを実現
Uno-X Mobilityはワールドチーム昇格後初のツール・ド・フランスで、チーム史に残る活躍を見せました。トルステイン・トレーエンが第4ステージ終了後にマイヨ・ジョーヌを獲得し、翌日も守ったことで、チームは初めてツールの総合首位に立っています。トレーエンは第6ステージの落車による脳振とうと肋骨骨折で無念の離脱となりましたが、その後も仲間たちは攻める姿勢を失いませんでした。トビアス・ハラン・ヨハネセンが第9ステージで2位に入り、逃げや総合争いで存在感を発揮するなど、北欧のチームらしい積極的なレースを展開しています。勝利数だけでは測れない注目度と確かな成果を積み重ね、世界最高峰の舞台で強豪勢力の一角へ近づいたことを証明する3週間となりました。
6.ポール・セクサスがフランスの希望に
19歳でツール・ド・フランス初出場を果たしたポール・セクサスは、総合4位でパリへ到着する鮮烈なデビューを飾りました。総合優勝したタデイ・ポガチャルとの差は11分56秒で、表彰台にも迫る位置を確保しています。大会最年少の出場者でありながら、序盤から上位争いへ加わり、第3ステージでは4位に入るなど早くから才能を示しました。厳しい山岳が続く後半戦でも大きく崩れず、3週間を通して安定した走りを維持した点は高く評価できます。フランス人選手による総合優勝は1985年のベルナール・イノーを最後に途絶えていますが、その長い空白を埋める存在として期待を集めるには十分な内容でした。将来性だけで語られる若手ではなく、すでに世界最高峰で総合上位を争えることを証明した大会となっています。
7.猛暑や山火事の影響でステージが短縮
2026年大会は競技以外でも、異常気象への対応を迫られました。コレーズ県に最高段階の猛暑警報が発令された第9ステージは、選手や観客、運営スタッフの安全を考慮してコースが変更され、当初の180.4kmから154.6kmへ短縮されています。さらに最終第21ステージも、フランス南西部で拡大した山火事への対応を優先するため、警備要員や治安部隊を被災地域へ振り向ける必要が生じ、予定されていた133kmから89kmへ変更されました。モンマルトルを巡る周回コースは維持されたものの、スタート地点はパリ市内へ移されています。猛暑と大規模火災が大会運営へ直接影響を及ぼし、ロードレースが自然環境や社会情勢と切り離せない競技であることを改めて印象づけました。
リザルト
| ステージ | 勝利者・勝利チーム |
|---|---|
| 第1ステージ | ヨナス・ヴィンゲゴー/Team Visma | Lease a Bike |
| 第2ステージ | イサク・デルトロ/UAE Team Emirates-XRG |
| 第3ステージ | タデイ・ポガチャル/UAE Team Emirates-XRG |
| 第4ステージ | マッズ・ピーダスン/Lidl-Trek |
| 第5ステージ | オラフ・コーイ/Decathlon CMA CGM Team |
| 第6ステージ | タデイ・ポガチャル/UAE Team Emirates-XRG |
| 第7ステージ | ティム・メルリール/Soudal Quick-Step |
| 第8ステージ | ティム・メルリール/Soudal Quick-Step |
| 第9ステージ | マチュー・ファンデルプール/Alpecin-Premier Tech |
| 第10ステージ | タデイ・ポガチャル/UAE Team Emirates-XRG |
| 第11ステージ | セーアン・ヴァーレンショル/Uno-X Mobility |
| 第12ステージ | ティム・メルリール/Soudal Quick-Step |
| 第13ステージ | マウロ・シュミット/Team Jayco AlUla |
| 第14ステージ | タデイ・ポガチャル/UAE Team Emirates-XRG |
| 第15ステージ | レムコ・エヴェネプール/Red Bull-BORA-hansgrohe |
| 第16ステージ | レムコ・エヴェネプール/Red Bull-BORA-hansgrohe |
| 第17ステージ | ヤスペル・フィリプセン/Alpecin-Premier Tech |
| 第18ステージ | リチャル・カラパス/EF Education-EasyPost |
| 第19ステージ | タデイ・ポガチャル/UAE Team Emirates-XRG |
| 第20ステージ | リチャル・カラパス/EF Education-EasyPost |
| 第21ステージ | マチュー・ファンデルプール/Alpecin-Premier Tech |
バルセロナで幕を開けたツール・ド・フランス2026は、初日のチームタイムトライアルから最終日のパリまで、総合争い、スプリント、山岳、逃げ切りが絶え間なく展開する大会となりました。序盤はヨナス・ヴィンゲゴーやイサク・デルトロが存在感を示しましたが、山岳区間へ入るとタデイ・ポガチャルが本領を発揮し、第6ステージのツールマレーをはじめとする勝負どころでライバルとの差を広げました。中盤にはティム・メルリールのスプリント力、セーアン・ヴァーレンショルの逃げ切り、マウロ・シュミットの勝利など、多彩な選手が主役となっています。後半戦ではレムコ・エヴェネプールが連勝して意地を見せ、リチャル・カラパスも山岳で積極的な攻撃を続けました。ポガチャルはアルプ・デュエズでも力の違いを示し、区間5勝を挙げて自身5度目の総合制覇を達成しています。猛暑や山火事によるコース変更、ヴィンゲゴーの途中棄権といった予期せぬ出来事もありましたが、最終日はマチュー・ファンデルプールがパリで劇的な勝利を飾りました。絶対王者の強さと新世代の台頭、各チームの戦術が凝縮された、最後まで見どころの尽きない3週間でした。
個人総合優勝(マイヨ・ジョーヌ)
タデイ・ポガチャル(UAE Team Emirates-XRG)が獲得
| 順位 | 氏名 | タイム |
|---|---|---|
| 第1位 | タデイ・ポガチャル(UAE Team Emirates-XRG) | 73時間56分26秒 |
| 第2位 | レムコ・エヴェネプール(Red Bull-BORA-hansgrohe) | +6分26秒 |
| 第3位 | イサク・デルトロ(UAE Team Emirates-XRG) | +9分42秒 |
| 第4位 | ポール・セクサス(Decathlon CMA CGM Team) | +11分56秒 |
| 第5位 | レニー・マルティネス(Bahrain Victorious) | +13分02秒 |
| 第6位 | マティアス・スケルモース(Lidl-Trek) | +14分59秒 |
| 第7位 | フアン・アユソ(Lidl-Trek) | +17分48秒 |
| 第8位 | リチャル・カラパス(EF Education-EasyPost) | +20分00秒 |
| 第9位 | トム・ピドコック(Pinarello-Q36.5 Pro Cycling Team) | +29分28秒 |
| 第10位 | ジョルダン・ジェガ(TotalEnergies) | +33分21秒 |
タデイ・ポガチャルが圧倒的な強さで自身5度目となるツール・ド・フランス総合優勝を果たしました。これで3連覇を達成し、ジャック・アンクティル、エディ・メルクス、ベルナール・イノー、ミゲル・インデュラインと並ぶ歴代最多タイの5勝目となります。今大会は区間5勝を挙げるだけでなく、山岳ステージでは決定的なアタックを何度も成功させ、ライバルたちを寄せ付けない走りを披露しました。終盤にはチームメートのイサク・デルトロの総合3位獲得も支え、エースとしての強さだけでなく、チーム全体を勝利へ導くリーダーシップも発揮しています。27歳にしてツール史に新たな1ページを刻み、現代ロードレース界を象徴する絶対王者であることを改めて証明した大会となりました。
ポイント賞(マイヨ・ヴェール)
マッズ・ピーダスン(Lidl-Trek)が獲得
マッズ・ピーダスンがポイント賞を制し、ツール・ド・フランスでは初となるマイヨ・ヴェールを獲得しました。純粋なスプリンターだけが有利な平坦区間に限らず、起伏のあるコースや中間スプリントでも着実に得点を重ねたことが勝因です。第4ステージでは区間優勝を飾り、その後も逃げ集団へ加わってポイントを回収するなど、持久力と判断力を生かした積極策を続けました。終盤の山岳区間でも争いを諦めず、第20ステージ終了時点で逆転不可能な差を築いて受賞を確実にしています。速さだけでなく、3週間を通じてあらゆる地形に対応できる総合力を示し、長年の目標だった緑色のジャージを手にしました。
山岳賞(マイヨ・ア・ポワ)
リチャル・カラパス(EF Education-EasyPost)が獲得
リチャル・カラパスが山岳賞を獲得し、2024年以来2度目となる水玉模様のジャージを手にしました。大会前半から登坂力を生かして山岳ポイントを集めると、終盤には逃げへ乗って主要な峠を上位通過し、総合争いの有力選手たちを上回りました。第18ステージではオルシエール・メルレットで区間優勝を飾り、第19ステージ終了後に山岳賞首位へ浮上しています。最終的に156ポイントを記録し、厳しい登りが続くレースでも攻撃的な姿勢を崩さなかったことが結実しました。総合成績でも8位に入り、ステージ勝利と特別賞を両立させた充実の3週間となっています。
ヤングライダー賞(マイヨ・ブラン)
イサク・デルトロ(UAE Team Emirates-XRG)が獲得
イサク・デルトロが初出場でヤングライダー賞を獲得し、白いジャージに輝きました。大会序盤の第2ステージでは早くも区間優勝を飾ると、その後も安定した走りを続け、若手選手による順位争いを大きくリードしています。終盤まで総合表彰台争いにも加わり、最終的には総合3位という見事な成績で大会を終えました。UAE Team Emirates-XRGではエースのタデイ・ポガチャルを支えながら、自らも勝負どころで力強い走りを披露し、将来性だけではない完成度の高さを証明しています。グランツール初表彰台とマイヨ・ブランを同時に手にしたことで、次世代を担うスター候補として世界中へ鮮烈な印象を残しました。
物議をかもした大会中のドーピング検査
ツール・ド・フランス2026では、レースの激しい攻防と並んで、ドーピング検査の実施方法が大きな議論を呼びました。発端となったのは、第15ステージを終えて第2休息日を迎える直前に行われた抜き打ち検査です。総合争いの中心にいた有力選手たちが深夜から早朝にかけて検査を受けたことが明らかになり、競技の公平性と選手のコンディション管理の両立について世界中で賛否が巻き起こりました。
総合首位を争っていたタデイ・ポガチャルは、午前5時ごろに宿泊先で検査のため起こされたことを明かしました。一方、ヨナス・ヴィンゲゴーはさらに早い午前2時に検査官が訪れたと説明しています。両選手とも検査そのものに反対する姿勢は示さなかったものの、レース期間中でも特に疲労が蓄積する終盤に、この時間帯での検査が行われたことには疑問を呈しました。
ポガチャルは「少し奇妙だった」と率直な感想を口にしながらも、「私たちはクリーンであることを証明しなければならない。そのために必要なら受け入れる」とコメントしています。競技の信頼性を維持する重要性を認めつつも、選手への負担を軽視すべきではないとの考えをにじませました。
ヴィンゲゴーも、午前2時の検査によって睡眠を中断されたことを明かし、「もちろん理想的ではない」と語っています。グランツールでは睡眠や回復が翌日のパフォーマンスを左右する重要な要素であるだけに、総合優勝を争う選手が最も休養を必要とする時間帯の対応として適切だったのかが論点となりました。
さらに、この問題に強い姿勢を示したのがレムコ・エヴェネプールです。エヴェネプールは深夜に選手を起こす運用について「非人道的だ」と厳しく批判し、3週間にわたる極限のレースでは回復時間そのものが競技の一部であり、それを奪う方法には改善の余地があると訴えました。
これに対し、検査を担当する国際検査機関(ITA)は、抜き打ち検査は世界アンチ・ドーピング規程に基づいて適切に実施されており、競技の公平性を確保するためには予告のない検査が不可欠だと説明しました。UCIも現行の運用を支持し、特定の選手を狙ったものではないとの見解を示しています。
結果として、今大会でドーピング違反が発覚した総合優勝候補はいませんでした。しかし、午前2時や午前5時という実施時刻は多くの関係者に衝撃を与え、「クリーンなスポーツを守るための厳格な検査」と「選手が最高の状態で競技できる環境」のどちらを優先すべきかという新たな議論を生みました。ツール・ド・フランス2026は、レース内容だけでなく、アンチ・ドーピング体制の在り方についても大きな課題を投げかけた大会として記憶されることになりました。
第1ステージ展開
ヨナス・ヴィンゲゴー、3年ぶりのマイヨ・ジョーヌ
2026年大会の開幕を飾った第1ステージは、スペイン・バルセロナで行われた19.6kmのチームタイムトライアルです。ツール・ド・フランスの開幕戦としてチームタイムトライアルが採用されるのは異例で、初日から総合優勝候補同士が直接タイムを争う注目の一日となりました。コース前半は海沿いを駆け抜ける高速区間でしたが、終盤にはモンジュイックの丘からオリンピックスタジアムへ向かう連続した上りが待ち受け、チーム力だけでなくエースの登坂力も勝敗を左右するレイアウトとなりました。
レースではチーム ヴィスマ・リースアバイクが完璧なペース配分を披露します。平坦区間でアシスト陣が徹底的に仕事を果たし、最後の上りでヨナス・ヴィンゲゴーが一気に加速。フィニッシュまで力強く踏み続け、チームをステージ優勝へ導きました。ネットカンパニー・イネオスはケヴィン・ヴォークランのパンクに見舞われながらも8秒差の2位と健闘し、タデイ・ポガチャルを擁するUAEチームエミレーツXRGは12秒差の3位で初日を終えています。
この結果によりヴィンゲゴーが2023年以来となるマイヨ・ジョーヌを獲得し、総合首位で大会をスタートしました。一方でポガチャルは総合タイムで12秒のビハインドを背負ったものの、終盤3.7kmでは全選手中最速タイムを記録したことで山岳賞首位となり、水玉ジャージを着用しています。開幕戦から両雄がそれぞれ異なるジャージを身にまとう展開となり、3週間に及ぶ総合争いへの期待を大きく高める初日となりました。
第2ステージ展開
イサク・デルトロ、ツール初出場で区間優勝を獲得
第2ステージはタラゴナからバルセロナまでの168.5kmで争われ、獲得標高2,500mの丘陵コースが設定されました。序盤は逃げ集団が先行しましたが、後半に入るとUAEチームエミレーツXRGが主導権を握り、バルセロナ市街へ向かうにつれて集団との差を縮めていきます。終盤にはモンジュイックの周回コースが待ち受け、短い急坂が繰り返される消耗戦となりました。
イサク・デルトロは途中でメカトラブルに見舞われ、自転車交換によって一時的に集団から遅れました。それでもチームメートの支援を受けて復帰すると、最終局面ではタデイ・ポガチャルのアシスト役として先頭付近に残ります。残り2kmを切ってマティアス・スケルモースが抜け出しましたが、UAEチームエミレーツXRGは慌てずに追走し、最後の上りでブランドン・マクナルティとアダム・イェーツがペースを引き上げました。
フィニッシュ直前にデルトロが力強く加速すると、ポガチャルもその後ろに続き、スケルモースをかわして並んだままゴールへ向かいました。ポガチャルはチームメートに勝利を譲る形で先頭を譲り、デルトロがツール・ド・フランス初出場で区間優勝を獲得しました。メキシコ人選手によるツールのステージ制覇は史上2人目となり、ポガチャルが同タイムの2位、レムコ・エヴェネプールが3位に入りました。
ヨナス・ヴィンゲゴーは4位でフィニッシュし、マイヨ・ジョーヌを守りました。ただしポガチャルがゴールのボーナスタイム6秒を獲得したため、両者の総合タイム差は12秒から6秒へ縮まりました。初日のチームタイムトライアルで先行したヴィンゲゴーに対し、ポガチャル陣営が早くも反撃した一日となり、総合争いは第2ステージの時点で緊張感を増しています。
第3ステージ展開
UAE Team Emirates – XRGの圧倒的な支配
第3ステージはスペインのグラノリェースからフランスのレ・ザングルまでの195.9kmで争われ、獲得標高3,850mに達する今大会最初の本格的な山岳ステージとなりました。気温はスタート時点で35度を超え、フランス側では山火事の影響によりフィニッシュ地点への観客立ち入りが禁止される異例の状況となります。序盤から逃げを巡る動きが活発化し、最初の1時間は平均43.6kmで進行しました。前方ではアレックス・ボーダンを含む6人が抜け出し、ボーダンは1級山岳コル・ド・トーズを先頭通過。国境を越えた後も粘り続け、コル・デュ・カルヴェールでも最大ポイントを獲得したことで山岳賞首位に浮上しました。
メイン集団は逃げとの間隔を慎重に管理し、残り12kmでボーダンを吸収します。ここからUAEチームエミレーツXRGが隊列を整え、ブランドン・マクナルティらが速度を上げながらタデイ・ポガチャルとイサク・デルトロを好位置へ運びました。最後は平均勾配6.5%、全長1.8kmのレ・ザングルへの上りで勝負が本格化します。チーム ヴィスマ・リースアバイクはセップ・クスがヨナス・ヴィンゲゴーを牽引し、対するUAEチームエミレーツXRGではデルトロがポガチャルのために強力なリードアウトを展開しました。
最終局面でデルトロが役目を終えると、ポガチャルが鋭く加速します。ヴィンゲゴーもすぐに反応しましたが、ポガチャルはフィニッシュ直前でもう一段踏み込み、わずかな差をつけて先着しました。ポガチャルは今大会初勝利と自身通算22回目のツール区間優勝を獲得し、ヴィンゲゴーが同タイムの2位、リチャル・カラパスが23秒差の3位、19歳のポール・セクサスが4位に入りました。ポガチャルとヴィンゲゴーの総合タイムは8時間46分55秒で並びましたが、ボーナスタイムと順位判定によってポガチャルがマイヨ・ジョーヌを獲得しています。初の山岳決戦で両者の実力が拮抗する一方、最後の数十メートルで違いを生み出したポガチャルが総合首位へ立つ一日となりました。
第4ステージ展開
2026年現時点での最強スプリンターはマッズ・ピーダスンなのか
第4ステージはカルカソンヌからフォワまでの181.9kmで争われ、獲得標高2,700m、2級山岳を2つ含む丘陵コースが設定されました。スタート直後から逃げを狙う動きが続き、2km地点でアレックス・キルシュが先行すると、マッズ・ピーダスンらが追随。16kmにわたる激しい攻防を経て、ジャスパー・フィリプセン、ビニアム・ギルマイ、マイケル・マシューズ、ケヴィン・ヴォークランらを含む34人の大集団が形成されました。総合24位で首位から5分6秒差だったトビアス・ハーラン・ヨハネセンではなく、トルステイン・トレーエンがこのグループで最上位につけ、途中から暫定総合首位へ浮上します。UAEチームエミレーツXRGは当初3分30秒前後に差を抑えていましたが、中間スプリントへ向かう区間で追走の勢いが弱まり、間隔は7分以上まで広がりました。前方ではギルマイが中間スプリントを制し、フィリプセン、ピーダスンが続いてポイントを獲得しています。
コル・ド・クドンへ入るとヤン・トラトニクが仕掛け、マティアス・ヴァチェクとキルシュが合流しましたが、最後の2級山岳コル・ド・モンセギュールで後続に捕まりました。モビスターはパブロ・カストリーリョとラウル・ガルシア・ピエルナが登坂区間で攻撃を重ね、重量級のピーダスンを振り落とそうとします。しかしピーダスンはクイン・シモンズ、ヴァチェクとともに先頭集団へ残り、リドル・トレックが数的優位を生かして終盤を掌握しました。フォワへ向かう平坦路でもカストリーリョとガルシア・ピエルナが揺さぶりをかけましたが、シモンズとヴァチェクが確実に封じ込めます。残り350mでヴォークランが先手を打ったものの、ピーダスンは落ち着いて距離を詰め、最後は圧倒的な加速で先着。シモンズが2位、ガルシア・ピエルナが3位に入り、リドル・トレックがワンツーフィニッシュを飾りました。メイン集団は13分近く遅れて到着し、トレーエンがタデイ・ポガチャルからマイヨ・ジョーヌを奪取。ピーダスンはツール通算3勝目を挙げると同時に、自身初となるポイント賞首位へ立ちました。
第5ステージ展開
上手かったオラフ・コーイ、ツール初出場で初勝利
第5ステージはランヌムザンからポーまでの158.3kmで実施され、獲得標高1,600mの平坦ステージとして設定されました。今大会で初めてスプリンターに明確な勝機が訪れる一日となり、各チームは序盤から集団スプリントを見据えてレースを進めます。スタート後にバティスト・ヴェイストロフェールが単独で飛び出すと、総合首位トルステイン・トレーエンを擁するウノエックス・モビリティがメイン集団を管理しました。逃げとの差は一時3分40秒まで広がりましたが、ティム・メルリールの勝利を狙うスーダル・クイックステップと、ジャスパー・フィリプセンを送り出したアルペシン・プレミアテックが追走に加わり、一定の範囲に抑え込みます。ヴェイストロフェールは113.5km地点の中間スプリントを先頭で通過し、後方ではマックス・カンターが2位、ポイント賞首位のマッズ・ピーダスンが3位に入りました。続く3級山岳コート・ド・バレックスでもヴェイストロフェールが最大ポイントを獲得し、この日の敢闘賞に選ばれています。
山頂を越えるとフレッド・ライトが攻撃を仕掛け、カスパー・アスグリーンとヴァランタン・パレパントルが反応しましたが、残り17kmで吸収されました。単独で粘っていたヴェイストロフェールも残り14km付近で捕まり、勝負は予想通り大集団によるスプリントへ持ち込まれます。フィニッシュまで5km余りの地点では落車が発生し、トレーエンが後方に取り残されました。黄色いジャージを守るために懸命な追走を強いられたものの、総合上位勢にはタイム差がつかない扱いとなり、首位の座を維持しています。先頭ではXDSアスタナがカンターのために隊列を整えましたが、最終直線でオラフ・コーイが空いた進路を見つけると鮮やかに抜け出しました。カンターとメルリールを上回ったコーイが、ツール・ド・フランス初出場で初勝利を獲得。カンターが2位、メルリールが3位、フィリプセンは5位に終わりました。デカトロンAG2Rラモンディアルにとっては2023年以来の区間制覇であり、スプリントによる勝利は2004年以来となります。翌日にピレネー山脈での本格的な総合争いを控えるなか、スプリンターが主役を務めた一日となりました。
第6ステージ展開
強い、強すぎる。
第6ステージはポーからガヴァルニー・ジェドルまでの186.2kmで行われ、獲得標高4,100mに達する今大会最初のピレネー決戦となりました。前半から逃げを目指す選手が相次ぎましたが、UAEチームエミレーツXRGはタデイ・ポガチャルの区間優勝と総合首位奪還を狙い、後方で厳しい速度を維持します。複数の山岳を越えるにつれて集団の人数は減少し、総合上位を争う選手だけが残る展開へ変わりました。黄色いジャージを着るトルステイン・トレーエンも粘り強く食らいつきましたが、レースの中心はポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーの対決へ絞られていきます。
最後の大きな勝負どころとなった超級山岳ツールマレー峠では、UAEチームエミレーツXRGのアシスト陣が登り口から強烈な牽引を開始しました。集団は急速に崩れ、総合優勝候補の周囲からもチームメートが次々に脱落します。ポガチャルは全長17.1kmの登坂区間で満を持して攻撃を仕掛けると、ヴィンゲゴーも反応を試みましたが、その差は次第に広がりました。ポガチャルは単独で山頂を通過した後も勢いを緩めず、下りとガヴァルニー・ジェドルへ続く道でリードを拡大します。ヴィンゲゴーは追走を続けたものの、前を行く世界王者の速度には届きませんでした。
ポガチャルは4時間32分7秒でゴールし、後続に2分38秒差をつける圧勝を飾りました。ヴィンゲゴーが2位、イサク・デルトロが2分57秒差の3位に入り、レムコ・エヴェネプール、ポール・セクサス、フロリアン・リポヴィッツも同じグループで続いています。トレーエンはツールマレー峠の下りで落車する場面もあり、大幅に遅れて総合首位から陥落しました。この結果によりポガチャルがマイヨ・ジョーヌを奪い返し、総合争いでも大きな優位を築きます。接戦が予想されていたヴィンゲゴーとの一騎打ちは予想以上の時間差がつき、ポガチャルの登坂力と独走力が際立つ山岳ステージとなりました。
第7ステージ展開
ティム・メルリール、調子の良さが光る
第7ステージはアジェモーからボルドーまでの175.1kmで争われ、獲得標高は850mに抑えられた平坦コースとなりました。前日に厳しいピレネー山岳を走り終えた選手たちにとっては、総合争いを休ませる一方、スプリンターには逃せない勝負の日です。コース上に設定された山岳ポイントは全長1.2km、平均勾配4.4%のコート・ド・ベゲイのみで、序盤から逃げが生まれても各スプリンターチームが間隔を管理しました。先頭との差は決定的なものにはならず、ボルドーへ近づくにつれて徐々に縮小。最終盤には各陣営がエースを前方へ運ぶため隊列を組み、位置取りを巡る激しいせめぎ合いが始まりました。
フィニッシュへ続く市街地では集団が横いっぱいに広がり、わずかな進路を奪い合う混戦となります。ティム・メルリールはジャスパー・フィリプセンの後方を狙っていましたが、何度も押し出されて理想の位置を失いました。それでも残り600mから進路を探し続け、ウノエックス・モビリティがセーレン・ヴァーレンショルトを先頭へ送り出すと、その動きを冷静に利用します。残り200mでメルリールが力強く踏み始め、前を行くヴァーレンショルトをゴール直前でかわしました。メルリールが今大会初勝利を挙げ、ヴァーレンショルトが2位、ビニアム・ギルマイが3位、マックス・カンターが4位に入りました。
メルリールにとってはツール・ド・フランス通算4勝目となり、出場した3大会すべてで区間優勝を記録しています。総合上位勢は大きな問題なく同じ集団で到着し、タデイ・ポガチャルがマイヨ・ジョーヌを維持しました。マッズ・ピーダスンもポイント賞首位を守り、翌日のベルジュラック到着へ向けて緑色のジャージを持ち越しています。山岳で総合順位が大きく動いた翌日に、純粋な加速力と位置取りの技術が勝敗を分けた一戦となりました。
第8ステージ展開
ティム・メルリール、二日連続の勝利
第8ステージはペリグーからベルジュラックまでの180.4kmで争われ、獲得標高1,150mの平坦コースが用意されました。序盤ではリアム・スロックが単独で抜け出し、メイン集団との間に数分のリードを築きます。後方ではスーダル・クイックステップやアンテルマルシェ・ワンティ、デカトロンAG2Rラモンディアルなどが先頭交代を行い、スプリント決着へ向けて差を調整しました。スロックは長時間にわたって逃げ続け、終盤まで粘り強い走りを披露しましたが、残り1.5km付近で吸収されます。
ベルジュラックの市街地へ入ると各チームの隊列が入り乱れ、フィニッシュ前の位置取りは激しさを増しました。ティム・メルリールは一時的に周囲を囲まれ、進路を失いかけたものの、残り400mから空いたスペースへ移動します。前方ではジャスパー・フィリプセンやビニアム・ギルマイが加速を始めましたが、メルリールは遅れて踏み出しながらも力強く差を詰めました。最後の直線で先行する選手を次々とかわし、ギルマイとオラフ・コーイを抑えて先着。前日の第7ステージに続く連勝を飾り、今大会2勝目とツール通算5勝目を手にしました。
ギルマイが2位、コーイが3位に入り、ポイント賞では首位マッズ・ピーダスンに対してメルリールとギルマイが差を縮めました。総合上位勢は同じ集団でゴールし、タデイ・ポガチャルがヨナス・ヴィンゲゴーに2分42秒差をつけたままマイヨ・ジョーヌを維持しています。長い逃げを最後まで追い詰めた集団の統率力と、窮屈な状況から突破口を見つけたメルリールの判断力が勝敗を分ける一戦となりました。
第9ステージ展開
マチュー、意地の勝利
第9ステージはマルモールからユセルまでの185.5kmで予定されていましたが、コレーズ県に熱波の最高警戒が発令されたため、安全面を考慮して154.6kmへ短縮されました。高低差のある丘陵地帯が続くレイアウトとなり、スタート直後からアタックが繰り返されます。総合勢を抱えないチームを中心に大規模な逃げ集団が形成されると、マイヨ・ジョーヌを着るタデイ・ポガチャル擁するUAEチームエミレーツXRGは無理な追走を行わず、タイム差を管理する姿勢を選びました。気温が40度近くまで上昇する過酷な条件のなか、逃げ集団では激しい主導権争いが続き、人数は徐々に絞られていきます。
終盤のアップダウン区間ではマチュー・ファンデルプール、トビアス・ハランド・ヨハンネセン、トム・ピドコックらが抜け出し、後続との差を広げました。最後の勝負どころでも3人は互いをけん制しながら力強く踏み続け、ユセルのフィニッシュへ向かいます。ゴールスプリントではファンデルプールが鋭い加速を披露し、ヨハンネセンとピドコックを抑えて区間優勝を獲得しました。ヨハンネセンが2位、ピドコックが3位で続き、逃げ切りが成功する一日となっています。
総合上位勢は先頭争いには加わらず、ポガチャルを中心としたグループで安定した走りを見せました。ライバルとのタイム差に大きな変動はなく、ポガチャルはマイヨ・ジョーヌを守ることに成功しています。猛暑によるコース短縮という異例の状況のなかでも、逃げ集団の駆け引きとファンデルプールの勝負強さが際立つステージとなりました。
第10ステージ展開
ポガチャルが力でねじ伏せる
第10ステージはオーリヤックからル・リオランまでの166.6kmで行われ、7つのカテゴリー山岳と獲得標高3,800mを含む厳しいレイアウトとなりました。序盤はアレックス・キルシュの攻撃をきっかけに動きが生まれ、中間スプリント通過後にはマチュー・ファンデルプールらが加速します。アタックと追走が繰り返された末に31人の逃げ集団が形成されましたが、UAEチームエミレーツXRGがメイン集団を牽引し、最大でも1分25秒ほどに差を抑えました。先頭ではハビエル・ロモがコル・ド・ラ・グリフールで単独となり、コル・ド・プラ・ド・ブックとコート・ド・ミュラも先頭で通過します。しかし約36kmに及んだ独走はピュイ・マリーへの登坂開始地点で終わり、代わってリチャル・カラパスが飛び出しました。
カラパスは下りでも攻め続け、コル・ド・ペルテュスの麓で約1分のリードを確保します。後方ではヴィスマ・リースアバイクがペースを引き上げましたが、頂上まで残り1kmでタデイ・ポガチャルが強烈な一撃を放ちました。ポガチャルはカラパスを追い抜き、ヨナス・ヴィンゲゴー、レムコ・エヴェネプール、ポール・セクサスらのグループに約20秒の差をつけます。さらにコル・ド・フォン・ド・セールでも速度を落とさず、単独でル・リオランへ到着しました。エヴェネプールが32秒差の2位、セクサスが3位に入り、ポガチャルは今大会3勝目、ツール通算24勝目を記録しています。
総合争いではイサク・デルトロが終盤に遅れ、区間8位で1分31秒を失いました。エヴェネプールが総合表彰台圏へ浮上し、セクサスもトップ5へ進出しています。一方のポガチャルはマイヨ・ジョーヌを守るだけでなく、ライバルとの差をさらに広げました。フランス革命記念日の山岳決戦は、逃げ選手たちの積極策を最後にポガチャルが力でねじ伏せる展開となりました。
第11ステージ展開
ヴァーレンショルトの勝利に見えるUno-X Mobilityの強さ
第11ステージはヴィシーからヌヴェールまでの161.3kmで争われ、2つの4級山岳を含む平坦基調のコースが設定されました。濡れた路面のなかで序盤から動きが相次ぎ、ジュリアン・アラフィリップ、マティス・ル・ベール、ネルソン・オリヴェイラ、アントン・チャーミグの4人が先行します。後方ではスプリンターを擁する複数のチームが追走を担い、逃げとの間隔を2分以内に抑えました。ル・ベールは中間スプリントを先頭で通過し、チャーミグは2カ所の山岳ポイントを獲得します。一方のメイン集団ではマッズ・ピーダスンがビニアム・ギルマイより先着してポイントを加算し、マイヨ・ヴェール争いの優位を広げました。補給区間ではベン・オコナーらが巻き込まれる落車も発生しましたが、いずれも競技へ復帰しています。
追走側は平坦路とわずかな追い風を生かして高い速度を維持し、逃げの生き残りを残り6km以内で吸収しました。そこから各陣営が隊列を整えようとしましたが、時速50kmを超える流れのなかで位置取りは混乱します。ソーレン・ヴァーレンショルトは早い段階から先頭付近を確保し、通常よりも長い距離を残してスプリントを開始しました。オラフ・コーイが背後から迫ったものの、ヴァーレンショルトは最後まで速度を保ってわずかな差で先着します。ジャスパー・フィリプセンは3位でゴールした後、進路変更を理由に一度降格処分を受けましたが、審議の結果として当初の順位へ戻されました。前の2ステージを制していたティム・メルリールは上位争いに加われず、3連勝を逃しています。
ヴァーレンショルトは前日の山岳ステージで最下位に終わっていましたが、その翌日にツール・ド・フランス初優勝を成し遂げました。勝者の平均速度は約50.9kmで、大会史上最速のステージとなっています。総合上位陣は大集団のなかでフィニッシュし、順位やタイム差に目立った変化はありませんでした。タデイ・ポガチャルもマイヨ・ジョーヌを維持しています。逃げを許しながらも終始猛烈な速度で進んだ一日は、早めに仕掛けたヴァーレンショルトの判断と、ゴールまで踏み切った持続力が実を結ぶ結末となりました。
第12ステージ展開
メルリール、今大会3つめの勝利
第12ステージはヌヴェール・マニクール・サーキットからシャロン・シュル・ソーヌまでの179.1kmで争われ、4つのカテゴリー山岳を越える平坦基調のコースとなりました。序盤からバティスト・ヴェストロフェールらが先行し、後続との間に一定のリードを築きます。メイン集団ではスーダル・クイックステップやデカトロンCMA CGMなどが追走を担当し、スプリント勝負へ向けて差を管理しました。終盤に入るとマッズ・ピーダスンが自ら攻撃を仕掛けるなど展開が慌ただしくなりましたが、逃げ切りには至らず、先頭に残った選手もゴール前で吸収されます。
シャロン・シュル・ソーヌへ向かう最後の直線は約1.6kmに及び、各チームが高速で隊列を組み直しました。残り約400mではフェルナンド・ガビリアら複数の選手が巻き込まれる大規模な落車が発生し、フィニッシュ争いは大きく混乱します。その状況を回避したティム・メルリールは後方から進路を見つけて加速し、オラフ・コーイとジャスパー・フィリプセンをわずかな差で抑えました。メルリールは第7、第8ステージに続く今大会3勝目を獲得し、スプリンターとしての強さを改めて示しています。
総合上位勢は同一集団でゴールしたため、順位やタイム差に大きな変化はありませんでした。タデイ・ポガチャルはマイヨ・ジョーヌを維持し、マッズ・ピーダスンもポイント賞首位を守っています。逃げの動きや終盤の攻撃が相次いだものの、最後は落車を避けながら的確なタイミングで踏み出したメルリールが勝利をつかむ一日となりました。
第13ステージ展開
逃げ切ったマウロ・シュミット、うれしい区間初勝利
第13ステージはドールからベルフォールまでの205.8kmで争われ、今大会唯一の200km超えとなる丘陵コースが用意されました。逃げを巡る攻防は100km以上にわたり、最初の1時間で55.3km、続く1時間でも51.5kmを走る猛烈な速さで進みます。33km地点で37人が抜け出すと、さらに20人が追いつき、57人の巨大な先頭集団が形成されました。メイン集団を管理するUAEチームエミレーツXRGは無理に差を詰めず、タイム差は最大8分25秒まで拡大します。総合10位でスタートしたトム・ピドコックは暫定順位で2位に浮上する位置まで迫り、総合争いにも影響を与える状況となりました。
勝負の舞台となった1級山岳バロン・ダルザスではピドコックが積極的にペースを上げ、山頂を先頭で通過します。その背後にはブランドン・マクナルティ、ケヴィン・ヴォークラン、ハロルド・テハダ、マウロ・シュミットらが残り、下りに入るとティム・ウェレンスも合流しました。残り16kmでシュミットとテハダが抜け出し、追走グループに約20秒の差をつけます。2人は協力して逃げ続けましたが、残り2kmから互いを警戒する展開となりました。
最後はシュミットが冷静にタイミングを見極め、テハダとのスプリントを制してツール・ド・フランス初勝利を挙げました。テハダが同タイムの2位、ピドコックが2秒差の3位に入り、後続のメイン集団は7分32秒遅れでフィニッシュしています。タデイ・ポガチャルは総合首位を守りましたが、ピドコックは順位を4位まで上げ、3位レムコ・エヴェネプールとの差を9秒へ縮めました。長時間に及ぶ逃げ争いとバロン・ダルザスでの激しい攻防を経て、下りで勝機を見いだしたシュミットの判断力が勝敗を分ける一日となりました。
第14ステージ展開
レムコ、デルトロ、セクサスと若い選手が躍動
第14ステージはミュルーズからル・マルクシュタイン・フェレリングまでの155.3kmで行われ、4つの主要山岳と獲得標高3,800mを詰め込んだ厳しいコースとなりました。序盤はアルペシン・プレミアテックが集団を管理し、ジャスパー・フィリプセンが中間スプリントを先頭で通過します。その後のグラン・バロンでベン・ヒーリーが仕掛けると、リチャル・カラパス、トム・ピドコック、マッテオ・ヨルゲンソンら約30人が前方へ加わりました。ヴァランタン・パレパントルはグラン・バロンとコル・デュ・パージュを最初に越え、アイネル・ルビオらを含む6人の先頭グループが形成されます。バロン・ダルザスでもパレパントルが山頂を奪い、山岳賞暫定首位へ浮上しました。
最終登坂のコル・デュ・ハーグに入ると、逃げ集団とメイン集団との差は1分30秒ほどまで縮まりました。先頭ではカラパスとトビアス・ハランド・ヨハンネセンが抜け出しますが、ヨナス・ヴィンゲゴーが残り2.5km付近で追いつきます。最大勾配16%の区間に差しかかるとタデイ・ポガチャルが鮮やかに加速し、ライバルを引き離して単独先頭へ立ちました。ヴィンゲゴーは反応を試みたものの差を詰められず、後方からポール・セクサスとイサク・デルトロが追い上げます。
ポガチャルは最後の緩斜面でも速度を維持し、38秒差で区間優勝を飾りました。デルトロが2位、セクサスが3位に入り、UAEチームエミレーツXRGは今大会2度目のワンツーフィニッシュを達成しています。ヴィンゲゴーは44秒差の4位、レムコ・エヴェネプールは48秒差の5位でした。ポガチャルは今大会4勝目、ツール通算25勝目を記録し、マイヨ・ジョーヌの座をさらに固めました。セクサスは総合順位を上げるとともに、若手賞の首位にも立っています。
第15ステージ展開
ヨナス・ヴィンゲゴー、落車によるリタイアの衝撃
第15ステージはシャンパニョールからプラトー・ド・ソレゾンまでの183.9kmで争われ、獲得標高3,950mと超級山岳フィニッシュを備えたアルプ初戦となりました。序盤の中間スプリントではジャスパー・フィリプセンが先着し、マッズ・ピーダスンが2位で通過します。その後は逃げを巡る攻防が長く続き、87km地点でトム・ピドコック、エガン・ベルナル、アダム・イェーツらを含む24人が先頭集団を形成しました。1級山岳ル・サレーヴではピドコックとクイン・シモンズが加速し、限られた選手だけが追随します。下りを経てマウロ・シュミットが単独で抜け出し、最後の登坂へ25秒ほどのリードを持って入りました。
レースの流れを大きく変えたのは残り24km付近の落車でした。ヨナス・ヴィンゲゴーはラウンドアバウトで前輪を滑らせて転倒し、右腕を固定されたまま救急車へ乗り込み、ツールからの途中離脱を余儀なくされます。イサク・デルトロも同じ事故に巻き込まれましたが、競技へ復帰しました。前方ではシモンズがシュミットをかわして先頭へ立ったものの、プラトー・ド・ソレゾンの登りで総合上位勢が急速に差を詰めます。タデイ・ポガチャルが残り8kmから先頭でペースを刻むと、デルトロとレムコ・エヴェネプールだけが食らいつきました。
アダム・イェーツの働きで逃げが吸収されると、3人はそのまま最終区間へ突入します。デルトロが残り1kmで数度仕掛けましたが、エヴェネプールは冷静に対応し、最後のスプリントでポガチャルを抑えて優勝しました。デルトロは6秒差の3位、ポール・セクサスとフロリアン・リポヴィッツは58秒遅れで続いています。エヴェネプールは山岳ステージで初のツール区間勝利を手にし、ヴィンゲゴーの離脱によって総合2位へ浮上しました。ポガチャルはマイヨ・ジョーヌを守り、デルトロは総合3位と新人賞首位へ進出する結果となりました。
第16ステージ展開
世界王者、圧巻の走り。ただ約30秒差のポガチャルも十分怪物。
第16ステージはエヴィアン・レ・バンからトノン・レ・バンまでの26.1kmで行われ、今大会唯一の個人タイムトライアルとなりました。コースは序盤に2級山岳コート・ド・ラランジュを越え、その後に下りと平坦路を組み合わせた構成で、登坂力だけでなく高速域での巡航性能やコーナリング技術も問われます。
早い時間帯ではジョシュ・ターリングが34分21秒を記録し、フィリッポ・ガンナを約5秒上回って暫定首位へ立ちました。その後はブルーノ・アルミライユが34分14秒、マッティア・カッタネオが34分01秒へ更新し、総合上位勢の出走を前に基準タイムを引き上げます。レムコ・エヴェネプールはスタート直後から力強く速度を上げ、4.8km、9.7km、18.1kmの全計測地点で最速を記録しました。登りでも失速せず、下りと湖畔の平坦区間でも攻め続け、平均時速48.45kmとなる32分19秒でフィニッシュします。
最終走者のタデイ・ポガチャルは山頂で15秒差にとどめましたが、危険を避けながら下ったことで差が広がり、28秒遅れの2位となりました。マッティアス・スケルモースが1分04秒差の3位、ポール・セクサスが1分16秒差の4位、イサク・デルトロが1分21秒差の5位に入っています。一方でフロリアン・リポヴィッツは終盤の右コーナーで落車し、競技を続けられず大会を去りました。
エヴェネプールは第15ステージに続く連勝を飾り、ツールでは3年連続となる個人タイムトライアル優勝を達成します。総合首位のポガチャルとの差も28秒縮めましたが、マイヨ・ジョーヌは4分32秒のリードを保ちました。デルトロはセクサスに5秒を失ったものの、20秒差で総合3位と新人賞首位を守っています。登りから下り、平坦まで隙のない走りを披露したエヴェネプールが、ベルギーの建国記念日に圧倒的な強さを示した一日となりました。
第17ステージ展開
ようやく勝ったアルペシンとフィリプセン。
第17ステージはシャンベリからヴォワロンまでの174.7kmで行われました。平坦ステージに分類されているものの、獲得標高は2,200mに達し、序盤から細かな登りが続くため、純粋なスプリンターには容易ではないコースとなりました。逃げを巡る動きは何度も発生しましたが、ポイント賞争いを続けるマッズ・ピーダスンとジャスパー・フィリプセンのチームが互いを警戒し、集団は落ち着かない状態で進みます。中間スプリントではピーダスンが得点を重ね、マイヨ・ヴェールを守る姿勢を示しました。
終盤には約40人の先頭グループが形成され、ジャスパー・ストゥイヴェンが残り20km付近から単独で飛び出しました。後続との差は一時40秒まで広がりましたが、アルペシン・プレミアテックが複数の選手を残して追走を続けます。ストゥイヴェンは粘り強く踏み続けたものの、上り基調となる残り4kmで吸収されました。残り1kmではジョシュ・ターリングが仕掛けましたが、マチュー・ファンデルプールが素早く対応し、曲がり角の多い最終区間を先頭で導きます。
ファンデルプールの完璧なリードアウトを受けたフィリプセンは残り約100mから加速し、後続を数車身引き離して今大会初勝利を挙げました。マウロ・シュミットが2位、オラフ・コーイが3位に入り、ピーダスンは8位に終わっています。この結果、ポイント賞では首位ピーダスンとフィリプセンの差が7ポイントまで縮まりました。タデイ・ポガチャルは約9分遅れのメイン集団で安全に走り切り、総合首位を維持しています。逃げ切りを狙うストゥイヴェンの挑戦と、最後まで続いたマイヨ・ヴェール争いが見どころとなる一日でした。
第18ステージ展開
前年から続くDNF、難航した契約更新、股間部の手術、すべてを乗り越え掴んだ勝利
第18ステージはヴォワロンからオルシエール・メルレットまでの185.2kmで争われ、獲得標高3,900mを含む本格的な山岳コースとなりました。序盤から逃げを狙う動きが続き、スーダル・クイックステップの3選手が仕掛けた流れにリチャル・カラパスが加わると、有力選手を含む先頭集団が形成されます。中間スプリントではマッズ・ピーダスンが得点を重ね、ポイント賞争いでジャスパー・フィリプセンとの差を広げました。前方ではカラパス、マウロ・シュミット、マッテオ・ヨルゲンソン、ヴァランタン・パレパントルらが勝負どころまで生き残り、逃げ切りの可能性を高めていきます。
最後の1級山岳オルシエール・メルレットに入ると、先頭グループは6人まで絞られました。勾配が厳しくなる区間でカラパスは何度か様子を探り、残り3.5km付近から力強く加速します。ライバルは対応できず、エクアドルのクライマーが単独で山頂へ向かいました。後方ではシュミットとヨルゲンソンが追いましたが、開いた間隔を縮められません。カラパスは最後まで勢いを保ち、シュミットに45秒差をつけて今大会初勝利を挙げました。ヨルゲンソンが同タイムの3位、パレパントルが1分14秒遅れの4位に入っています。
総合勢は逃げを積極的に追わず、タデイ・ポガチャルとレムコ・エヴェネプールらは同じグループでフィニッシュしました。このため主要順位に大きな変化はなく、ポガチャルが4分32秒差でマイヨ・ジョーヌを守っています。イサク・デルトロも総合3位と新人賞首位を維持しました。区間優勝によってカラパスは総合10位へ浮上し、山岳賞争いでも得点を加算します。一方のパレパントルは山岳ポイントでポガチャルに1点差まで迫りました。逃げに乗る判断と終盤まで力を温存した走りが実り、カラパスがオルシエール・メルレットで会心の勝利を手にした一日です。
第19ステージ展開
絶対王者ポガチャルを止められるものはいない
第19ステージはギャップからアルプ・デュエズまでの127.9kmで争われ、獲得標高約3,500mを詰め込んだ短距離の山岳決戦となりました。スタート直後のコル・バイヤールで集団が分裂し、リチャル・カラパス、ヴァランタン・パレパントル、セップ・クス、レニー・マルティネス、アダム・イェーツ、マッズ・ピーダスンらを含む42人の先頭グループが形成されます。パレパントルはコル・バイヤールとコル・デュ・ノワイエを先頭通過し、山岳賞首位へ浮上しました。中間スプリントではピーダスンが最大ポイントを獲得し、ポイント賞争いでジャスパー・フィリプセンとの差を57点まで広げています。
逃げ集団とメイン集団の間隔は一時4分25秒まで拡大しましたが、総合争いを見据えるチームが追走を強めます。コル・ドルノンでは先頭グループが細分化し、カラパスが山頂を最初に通過しました。アルプ・デュエズの麓へ到達した段階で逃げには3分25秒のリードが残り、前方ではカラパス、クス、マルティネスが有力候補として抜け出します。後方のタデイ・ポガチャルはゴールまで13kmを残して総合ライバルを振り切り、前を走るイェーツの援護を短時間受けたあと、単独で差を縮めました。
カラパスは残り3kmから攻撃を繰り返しましたが、ポガチャルが約2km地点で追いつき、マルティネスとともに先頭へ並びます。マイヨ・ジョーヌは最終1kmに入って再加速し、2人を置き去りにしてアルプ・デュエズ初勝利を挙げました。マルティネスが6秒差の2位、カラパスが3位に入り、ポガチャルは今大会5勝目、ツール通算26勝目を達成します。レムコ・エヴェネプールはイサク・デルトロとポール・セクサスからわずかに時間を奪いましたが、総合首位を脅かすまでには至りませんでした。伝説的な21のヘアピンを舞台に、ポガチャルが逃げとの大差をひっくり返して圧倒的な登坂力を示した一日です。
第20ステージ展開
超一流の選手をも疲弊させ、2度の落車をおこさせたクイーンステージ
第20ステージはル・ブール・ドワザンからアルプ・デュエズまでの170.9kmで争われ、獲得標高5,450mに達する今大会屈指の山岳決戦となりました。コル・ド・ラ・クロワ・ド・フェール、コル・デュ・テレグラフ、コル・デュ・ガリビエ、コル・ド・サレンヌを越えてアルプ・デュエズへ向かう過酷な設定で、スタート後から有力クライマーが次々と前方へ入りました。リチャル・カラパスとセップ・クスは逃げの中心を担い、山岳を通過するたびに後続を振り落として勝負を二人の争いへ絞り込みます。カラパスは各峠で得点を積み重ね、山岳賞首位を確実なものとしました。
終盤のコル・ド・サレンヌではクスが鋭い仕掛けを見せ、カラパスを引き離して単独先頭に立ちました。アメリカ人クライマーは17kmほどを残して優位を築き、区間勝利へ近づきます。しかしゴールまで7.1km付近の暗いトンネルを抜けた直後に縁石へ接触して転倒し、再び走り出したあとも技術的な下りで二度目の落車を喫しました。安全ネットによって道路外への転落は免れたものの、その間にカラパスが追いつき、先頭を奪い返します。
カラパスは残り区間を力強く押し切り、第18ステージに続く今大会2勝目を獲得しました。レムコ・エヴェネプールが2位、クスは不運に見舞われながらも3位でフィニッシュしています。総合首位のタデイ・ポガチャルは自ら攻撃するのではなく、表彰台と新人賞を争うチームメートのイサク・デルトロを支える走りに徹しました。デルトロは5位に入り、ポール・セクサスとの差を広げて総合3位を守っています。ポガチャルもマイヨ・ジョーヌを維持し、最終日を前に総合優勝をほぼ確実なものとしました。クスの二度にわたる転倒で勝負の行方が一変し、最後まで生き残ったカラパスが山岳賞と区間優勝を同時に手にした劇的な一日です。
第21ステージ展開
やっぱマチューはすごかった
最終第21ステージはフランス南西部で続く山火事の影響により、当初予定されていたティエリからパリまでの133kmから、パリ市内を巡る88.7kmへ短縮されました。緊急対応に当たる治安部隊を被災地域へ振り向けるための措置で、選手たちは首都から競技を開始します。序盤は恒例の記念撮影や談笑が見られましたが、シャンゼリゼ通りの周回へ入ると速度が上がり、モンマルトルの急坂を3度越える起伏に富んだ争いへ変わりました。
2度目のモンマルトル通過後にはタデイ・ポガチャル、マチュー・ファンデルプール、レムコ・エヴェネプール、マッズ・ピーダスンらが前方へ進出しました。最後の登坂ではファンデルプールが加速し、ポガチャルだけが反応します。クラシックレースを思わせる2人の攻防が続いたものの、追走勢はゴールまで約700mの地点で合流しました。ポガチャルが力を緩める一方、ファンデルプールはそのままスプリントへ持ち込み、後方から迫る選手たちをわずかに退けます。
ファンデルプールはジャスパー・フィリプセンを僅差で抑え、今大会2勝目となる区間優勝を獲得しました。3位にはポイント賞首位のピーダスンが入り、ポガチャルは30位で大会を終えています。総合成績ではポガチャルがエヴェネプールに6分26秒、イサク・デルトロに9分42秒の差をつけ、歴代最多に並ぶ通算5度目のツール制覇を達成しました。祝賀ムードだけでは終わらず、モンマルトルでの攻撃とシャンゼリゼでの接戦が最後まで勝負を盛り上げた最終日です。
2027年の展望
ツール・ド・フランス2027は7月2日にスコットランドのエディンバラで開幕します。第1ステージはカーライルまでの184km、第2ステージはケズウィックからリバプールまでの223km、第3ステージはウェルシュプールからカーディフまでの223kmが設定され、スコットランド、イングランド、ウェールズの3地域を巡ってからフランスへ渡る予定です。海外グランデパールとして初めて英国の3地域を結ぶ構成となり、平坦路だけでなく起伏や横風も勝負へ影響する可能性があります。特にウェールズの丘陵地帯を通る第3ステージでは、総合候補が序盤からタイム差を意識する展開も考えられます。
総合争いでは自身6度目の頂点を目指すタデイ・ポガチャルが中心となります。2026年大会で区間5勝を挙げ、歴代最多記録に並ぶ通算5勝目を達成した実績からも、出場すれば優勝候補の筆頭になるでしょう。一方でヨナス・ヴィンゲゴーが万全の状態で戻れば、山岳でポガチャルへ対抗できる有力な存在です。レムコ・エヴェネプールは2026年に総合2位へ入り、個人タイムトライアルと登坂の両方で結果を残したため、コース設定によっては王座争いへさらに深く食い込む可能性があります。
次世代では2026年大会で総合3位とヤングライダー賞を手にしたイサク・デルトロの動向が注目されます。これまではポガチャルを支える立場も担ってきましたが、成長次第ではチーム内で総合成績を狙う役割を任されるかもしれません。経験を積んだポール・セクサスなどの若手が表彰台争いへ加われば、従来の有力選手だけでは読めない展開も生まれます。
英国で行われる最初の3ステージ以外については、現時点で全コースや山岳配置、個人タイムトライアルの距離などが公表されていません。アルプスやピレネーの登場時期、頂上フィニッシュの数、平坦区間の割合によって、有利になる選手は大きく変わります。ポガチャルが前人未到の通算6勝目を成し遂げるのか、ヴィンゲゴーやエヴェネプールがその歩みを止めるのか、それとも新しい世代が主役へ躍り出るのか。2027年大会は歴史的記録への挑戦と勢力交代の可能性が交差する一戦となりそうです。



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