コーラが世の中で一番おいしい飲み物のように感じる瞬間がある。それは100km以上をノンストップで走った後や、自分としてはかなり乗ったと感じるロングライドの後。スカッと爽やかどころではない。乳酸の溜まった身体には、まりにも刺激的すぎる快感。今日のエモい瞬間は、そんなコーラの美味しさを感じるひとコマです。
美味い、美味い、美味すぎる
ロードバイクで100km以上走ったあと、人はだいたい同じ顔になる。脚は重く、背中は汗で張りつき、口の中はからからだ。補給食のジェルもバーも、もう甘ったるく感じる。
そんな状態で視界の端に現れるのが、サイクリングロード脇にぽつんと立っている自動販売機だ。
自転車を止め、ヘルメットをずらし、ポケットから小銭を取り出す。選ぶのは決まっている。冷えたコーラだ。スポーツドリンクでもミネラルウォーターでもない。あの黒い炭酸を体が求めている。
ガコン、と音を立ててペットボトルが落ちてくる。その瞬間、ローディーの顔には少しだけ笑みが浮かぶ。キャップをひねり、あるいはプルタブを開け、そしてほとんど間を置かずに一気に流し込む。
最初の炭酸が喉を通った瞬間、体が目を覚ます。甘さ、炭酸、そして冷たさ。その全部が、100km以上走ってきた体に一気に染み込んでいく。さっきまで干からびていた体が、ほんの数秒で生き返るような感覚だ。
気づけば、半分以上はもう無くなっている。ベンチもテーブルもない。ただ自販機の横で、ロードバイクを片手で支えながら飲んでいるだけなのに、妙に満たされた気分になる。
周囲には特別な景色があるわけでもない。ただの町中。ただの自販機。それでも、長い距離を走ったあとに飲むコーラには、妙な説得力がある。コンビニのイートインでも、カフェのアイスコーヒーでも、この瞬間にはかなわない。
飲み終わったボトルを軽く振り、最後の一滴まで口に流し込む。そしてキャップを閉め、バイクのボトルケージにねじ込むか、近くのゴミ箱に放り込む。
再びサドルにまたがり、ペダルを回す。脚はまだ重い。だが、さっきまでの絶望的な感じはもうない。
たった一本のコーラ。それだけで、人はもう少しだけ走れる。サイクリングロードの自販機の前で見かけるあの光景は、ローディーにとって小さな復活の儀式みたいなものだ。


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