ロードバイクで見かけるエモい瞬間 Vol.017~あどけないローディーたち~

雑記コラム

3月に入り、少しずつライドが気持ちいい日が増えてきましたよね。この季節になるとCRにもローディーが増えるのを実感します。今日はそんな春に相応しいような、若々しく初々しい、あどけないローディーたちの様子をお届けしたいと思います。

仲間と、走る、向かい風

荒川のサイクリングロードを走っていると、時折、眩しすぎるほどの純粋さに出会うことがある。

とある晴れた日の午前中、私の前方を走っていたのは、中学生らしき三人組のライダーだった。機材はバラバラ。一人はお下がりのようなアルミロード、一人はエントリーグレードの最新モデル、最後尾の少年はフラットペダルの型落ちロードを必死に漕いでいる。

驚いたのは、彼らのその「姿」。
誰に教わったのか、あるいはYouTubeのプロレースを穴が開くほど眺めた結果なのか。彼らは狭い車間距離を保ち、一列になって「トレイン」を組んでいた。

先頭の少年が向かい風を、まだ幼さが残っているその細い体で一身に受け止め、懸命にペダルを回す。数分後、彼は大げさなほど大きく肘で合図を送り、列の最後尾へと下がる。代わって先頭に出た少年は、前の仲間を気遣うように、しかし力強くスピードを上げた。

そこには、大人たちが語るような「効率」や「ワット」なんて言葉は存在しない。ただ「タディやヨナスやレムコのように」「仲間と最後まで一緒に走り切りたい」という、混じり気のないロードバイクへの想いだけが渦巻いていた。

信号も交差点もない荒川のストレート。彼らの世界は今、仲間の背中と、前を走るタイヤの動き、そして互いの荒い呼吸音だけで完結している。 時折、ローテーションがうまくいかずに車間が開いてしまうと、仲間が振り返り「もっと寄れよ!」「頑張れ!」と言わんばかりの視線を飛ばしている。その必死さが、あまりにも眩しくエモい。

彼らはまだ、プロレーサーでもなければ、有名なインフルエンサーでもない。けれど、あの瞬間、あの荒川において、彼らは間違いなく自分たちの物語の主人公だった。

私は心の中で彼らにエールを送った。その友情も、その情熱も、いつか大人になって忘れてしまうかもしれない。けれど、共に風を切り、仲間の背中を信じて走り続けたこの時間は、彼らの血肉となって、これからの人生という長いロードを支えていくに違いない。

彼らの背中が見えなくなるまで、私はしばらくその小さな「トレイン」の残像を追い続けていた。

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