新しいバーテープを巻くために、古いバーテープを解く。そんな瞬間、少し寂しい気持ちになるのは自分だけだろうか。昨日、ふとしたことで巻き直したバーテープに想ったエモい瞬間が今回の内容です。みなさんはどうですか?
いままで、ホントに、ありがとう
新しい季節の気配を感じると、ふと愛車のハンドル周りのくたびれ具合が気になり始める。巻いてからちょうど一年ほど。かつて鮮やかだったその色は、幾度ものロングライドで浴びた日差しに灼かれ、いつの間にか力なく退色している。ブラケット付近の、いつも強く握り込む場所は表面が薄く剥がれ、手のひらの形に馴染みきった独特のテカリを帯びていた。それは間違いなく、この一年間で自分がどれだけの距離を走り、どれだけの坂を登ってきたかを物語る記録そのものだ。
意を決して、古いエンドテープを解く。接着剤の跡が残らないよう、ゆっくりと慎重に剥がしていく作業は、どこか過去の自分を紐解いていくような感覚に似ている。真夏の猛暑日に流した滴るような汗や、予期せぬ夕立に打たれたあの日の湿り気。冬の寒さに凍えながら、必死にハンドルを抑え込んだ指先の感覚。層を重ねるごとに、記憶の断片が剥がれ落ちては消えていく。
最後の一巻きを解き、剥き出しになったハンドルバーが現れた瞬間、そこには一年間のライドの面影が過る。役目を終えた古いテープは、もはやただの薄汚れた帯に過ぎないが、ゴミ箱に捨てる前、一瞬だけその重みを感じずにはいられなかった。
新しいテープを手に取る。今度は少し厚みも質感も違うものを選んだ。ブラケットの複雑なカーブを、シワひとつ寄せずに慎重に巻き上げていく。指先に伝わる適度なテンションと、新品特有の吸い付くようなグリップ力。最後のエンドテープを丁寧に貼り終えたとき、ハンドル周りだけが妙に眩しく見えた。
新しくなったバーテープを握ってみると、頼もしい感触が返ってくる。まだ誰の汗も吸っていない、無垢な相棒。このテープがまた一年後、どんな風にくたびれているのか。それを見る頃の自分は、今よりも少しだけ遠い場所へ行けているだろうか。
そんな期待を胸に、まだ見ぬ次の景色のために、新しいグリップを力強く握りしめた。


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