ロードバイクで見かけるエモい瞬間 Vol.015~向けられる視線~

雑記コラム

ロードバイクに乗っていると、速さや距離ばかりを追いかけがちになりますが、ときどき数字では測れない瞬間に出会います。特別なイベントでも、劇的な景色でもありません。ただ、ほんの数秒の出来事。それでも、その一瞬が妙に心に残るのです。今回は、そんな小さくて静かな“エモい瞬間”をお届けします。

どこか、眩しい、そのまなざし

河川敷のサイクリングロードを流していると、不意に視線を感じることがある。信号待ちで止まった瞬間、公園のフェンス越しにこちらを見つめる小さな子ども。ヘルメット、サングラス、細いタイヤ、曲がったハンドル。その全部が、まだ補助輪を外したばかりの子どもには、別世界の乗り物に見えているのだろう。

ただじっと、食い入るように見ている。声をかけるわけでもなく、ただ目だけで追ってくる。その視線に気づいた瞬間、さっきまで気にしていた速度や心拍数がどうでもよくなる。いま自分が跨っているこの機械が、誰かの未来の憧れになっているかもしれないと考えると、不思議な静けさが胸に広がる。

こちらにとっては、ただの練習だ。向かい風に耐え、坂で苦しみ、帰り道の補給を考える。そんな平凡な一日。それでも子どもの目には、少しだけ特別に映っているのかもしれない。速さではなく、強さでもなく、「あんな自転車に乗りたい」という純粋な感情。そのまなざしは、どこか眩しい。

信号が青に変わる。ペダルを踏み込み、走り出す。背中にまだ視線を感じながら、自然と姿勢を正す。格好つけるわけではない。ただ、まっすぐ安全に走るだけだ。数秒の出来事なのに、あの視線は妙に長く心に残る。

ロードバイクに乗る理由は人それぞれだが、ときどき出会うこどもの羨望のまなざしは、走る意味を少しだけ変えてくれる。データには残らないけれど、確かに胸に刻まれる瞬間。

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