ロードバイクで見かけるエモい瞬間 Vol.004~孤独なローディーの別れ~

雑記コラム

2025年も12月に入り、最近は本当に寒くなりましたね。そんな今日はロードバイクで見かけるエモい瞬間。今日はVol.004として「孤独なローディーの別れ」をお届けしたいと思います。ライドは基本的に単独。だからこそ、自分と同じように独走するローディーとのすれ違いは、どこかうれしいものです。

独りが、優しく、ありがたい

冬のサイクリングロードは、乾いた空の下で静まり返っている。夏場は溢れていた家族連れやジョギングをする人も少なく、視界に映るのは、枯れた草木が続く河川敷の景色と、アスファルトの冷たい質感ばかりだ。

この季節にロードバイクに乗る者は、誰もが等しく、過酷な冷気と向き合う孤独な旅人だ。体温を逃がさないよう重ね着をし、厚いグローブの中でかじかむ指を気にしながら、ひたすらペダルを回し続ける。それは、自分との対話であり、修行に近い時間だ。

そんな静寂を破り、ふいに遠くから対向するローディーの姿が見えた。互いに同じ寒さと戦っていることが、遠目にも伝わってくる。全身を防寒ウェアに包み、下を向いて黙々と走るその姿勢は、風景の一部と化しているかのようだ。

すれ違うまで残り数秒。互いに顔を上げることなく、わずかに視線だけが交差する。挨拶の言葉はない。声を出す労力さえ惜しいほどの冷え込みだ。

それでも、その一瞬の視線の交わりには、言葉以上の情報が詰まっている。「よくぞ走っている」「この寒さ、わかるだろう」「お互い気を付けて」といった無言のエールと、過酷な状況を共有する者同士の連帯感。

そして、そのローディーの姿は一瞬で背後に遠ざかり、再び一人になる。彼はどこへ向かうのだろうか、自分はどこまで行くのだろうか。ただ、いま確かに存在した、短い、孤独な旅人同士の邂逅を胸に、再びペダルを踏み込む。この冷たい冬の道には、互いの別れ際にしか生まれない、ささやかな温もりがある。

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