悲しい一報が飛び込んできました。
高い防水透湿の性能で知られたGore-Tex。さまざまなサイクルウェアブランドが使用していますし、みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
そんなGore-Texの製造販売元であるWL Gore & Associates社がGorewear事業の閉鎖を決定したという報道が出ました。
えっ!?Gore-Tex使っている製品はどうなるの?気になっている方も多いのではないでしょうか。今回はそんなGore-Texの行方について取り上げてみたいと思います。
Gore-Texとは?
Gore-Tex(ゴアテックス)とは、アメリカのWL Gore & Associates(WL ゴア&アソシエイツ)社が開発した防水透湿素材で、水を通さずに汗などの水蒸気を外へ逃がす構造を持ちます。従来はフッ素樹脂(ePTFE)膜を使用していましたが、PFAS(有機フッ素化合物)による環境負荷が問題視されたため、近年は非フッ素系の新素材「ePE(拡張ポリエチレン)」へと移行が進んでいます。これにより、従来の防水性能を維持しながらも環境への影響を大幅に低減したサステナブルな素材へと進化しています。
Gore-Texはどんなことに使用されている?
Gore-Tex(ゴアテックス)は、雨風を防ぎつつムレを抑える高機能素材として、自転車関連でも幅広く活用されています。代表的なのはレインジャケットやウィンドブレーカーなどのサイクルウェアで、長時間のライドでも快適な体温とドライ感を維持できる点が特徴です。さらに、冬季用のサイクルグローブやシューズカバーにも採用され、防水性と透湿性を両立した快適な装備として定評があります。最近では、Gore-Tex搭載のサイクリングシューズやバックパックなども登場しており、悪天候下でのライドを支える重要な素材となっています。
なぜGorewear事業から撤退するのか?
Gorewear(ゴアウェア)は、アメリカのWLゴア&アソシエイツ社が展開してきた高機能スポーツウェアブランドです。1985年に「Gore Bike Wear」として誕生し、自社開発の防水透湿素材Gore-Texを用いたサイクリング用ジャケットで知られるようになりました。その後、ランニングウェア部門の「Gore Running Wear」と統合し、2018年からは「Gorewear」としてサイクルとランの両カテゴリーを展開してきました。悪天候下でも快適に走れる高機能ウェアとして、世界中のサイクリストやランナーから高い評価を得てきたブランドです。
しかし親会社であるWLゴア&アソシエイツ社はGorewear事業の閉鎖を発表しました。正式な終了時期は2026年3月末とされており、約40年にわたるブランドの歴史に幕を下ろすことになります。背景には、スポーツアパレル市場の競争激化や長期的な収益確保の難しさがあるとされています。特にサイクリングやランニング向けの高機能ウェア市場は各ブランドがひしめく激戦区であり、素材性能だけでは差別化が難しくなっていました。また、ゴア社自身が今後は自社ブランドよりも素材供給ビジネス(Gore-Texファブリックの提供)に注力していく方針を示していることも、事業整理の大きな要因とみられます。
この閉鎖により、Gore-Tex素材を活用したサイクルウェアの代表的ブランドが一つ消えることになります。ただし、Gore-Texそのものの供給は継続されるため、今後は他ブランドが同素材を用いた製品を展開していく流れが強まるでしょう。環境対応素材「ePE」などの新技術への転換も進む中で、ゴア社は“素材メーカー”としての役割をより強めていくと考えられます。
Gore-Texの行方は?Gore-Tex製品はどうなるの?
GOREWEARの事業終了後も、Gore-Tex(ゴアテックス)素材そのものの供給と開発は継続されます。今回の閉鎖はあくまでゴア社が展開していた自社ブランド「GOREWEAR(ウェア事業)」の撤退であり、素材事業を縮小するものではありません。むしろゴア社は今後、Gore-Texを中心とした高機能素材の開発・供給ビジネスに経営資源を集中させる方針を示しています。
そのため、アークテリクスやナイキ、Rapha、Assos、Castelliといった他社ブランドによるGore-Tex採用製品は今後も引き続き展開されます。また、ゴア社は環境負荷低減を目的に、従来のフッ素樹脂(ePTFE)を用いた膜から新素材「ePE(拡張ポリエチレン)」への移行を進めており、防水透湿性能を維持しながらサステナブルな製品ラインを強化しています。
つまり、GOREWEARというブランドは消滅するものの、「Gore-Tex」という素材技術はこれまで以上に多くのブランドへ広く供給され、今後もアウトドアやサイクルウェア市場における標準素材として生き続けていくと見られます。



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